最新(2016年度)のImpact Factorを調べてみました。自身の研究を発信するために論文を書いて雑誌に掲載してもらうわけですが、世の中にはゴマンと雑誌があります。ですから自分の研究内容に沿っていて、自分と同じような境遇の人間が読む機会が多い雑誌を選ぶことになります。

できれば沢山の読者がいて、影響力の強い雑誌に載せてもらいたいものですが、その影響力を測る指標で最も普及しているのがImpact Factor(以下IF)でしょう。どうも誤用が多いことが問題になっているそうですが、その辺の記事は後日改めて。どういう数値かというと、ある雑誌の2016年度のIFは

(2014年の掲載論文数+2015年の掲載論文数)/2016年に引用された論文数

で計算されます。ちなみに引用された論文数はWeb of Scienceに含まれる雑誌での引用数です(詳しくは以下ご参照を:インパクトファクター)。

それでは脊髄脊椎外科領域に限定した雑誌でIFが高い雑誌を探すと、以下の5つになるんじゃないでしょうか。脊椎外科ジャーナル

私の勝手な見解で言いますと、1番歴史があるのはやはりSpineとJNS(Spine部門は比較的新しいですがもともとは1944年創刊)、新興の雄がThe Spine Journalといったところでしょうか。ESJは唯一アメリカ以外の発信で、自己引用がやや多い、CSSは去年Journal of Spinal Disorders & Techniquesから改名して更なる躍進に期待という印象です。こちらは鐙先生の頸椎椎弓根スクリュー固定術の論文が掲載されていたりでご存じの方も多いと思います。

ただ上記雑誌に1本も持っていな私がとても言えることではありませんが、方法論としてはちょっと怪しい論文もたくさん掲載されています。まぁ脊髄脊椎の、しかも外科というかなり狭い領域の、コアな読者を持つ雑誌たちです。ので、方法論よりネタの興味深さ・トレンドが優先されるのは仕方ないのでしょう。

脊髄脊椎の外科に限定しなければJoint Bone Spine(IF3.32: FRA)などもありますし、神経外科全般ならNeurosurgery(IF4.88: USA)や整形外科の雑誌Journal of Bone and Joint Surgery AM(IF4.84: USA)、外傷系でJournal of Neurotrauma(IF5.19: USA)、骨代謝の雑誌でOsteoporosis International(IF3.10: ENG)やJournal of Bone and Mineral Research(IF6.28: USA)も投稿先になり得ます。

ちなみに臨床系の総合雑誌はIFが高く、代表的なものとしては先述の4大ジャーナルがあります。全く可能性がないかというとそうではなく、2016年には腰椎手術の論文が、2009年には椎体形成術の論文がNEJM(IFはなんと71.6まで上昇)に載っていたりします!が、やはりcommon disease(例えば腰部脊柱管狭窄症や椎体骨折)についての、統計解析まで方法論がしっかりした、多施設RCTじゃないと難しそうです。アカデミックな実績がない民間病院で臨床研究の素人にとっては高嶺の花。手術するしないで2群にランダム割り付けなんか同意してもらえるわけがない。

我々脊髄脊椎外科臨床医が医学の発展に貢献する方法は、上述の5ジャーナル中心に方法論のしっかりした、質の高い研究をたくさん発信していくことのようです。いずれはデータベースを作って、他施設で一般臨床雑誌に挑戦もしてみたいものです。引退までには。

さぁ、モチベ―ションあげて今日も勉強、勉強。