北大セミナーで国際医療福祉大学の石井教授が紹介されていたRCTが面白そうだったので読んでみました。少し古いですが、2005年のSpineからです。

Efficacy of dilute betadine solution irrigation in the prevention of postoperative infection of spinal surgery.

研究疑問  :希釈イソジン創内洗浄は感染予防に効果があるか?
研究デザイン:RCT
セッティング:台湾の1大学病院

P 脊椎手術患者(414例)
I  閉創前に3.5%イソジン生食で創内を3分灌流+生食2000ml洗浄
C 生食2000ml洗浄のみ
O 創部感染(主要エンドポイントの設定はなし)
 
術後感染は完全には予防できていない。イソジンにはMRSAふくめ広範な殺菌力があり創内洗浄に用いることで感染予防が期待でそうだが、細胞障害性もあり使いにくい。なら薄めたイソジンなら益が害を上回るんじゃないか?ちょっと調べてみました、という論文。結果は平均1年ちょっとの追跡でI群は感染なし、C群は7例(表層1、深部6)感染ありで、リスク高そうな人には希釈イソジン創内洗浄お薦めです、という結論。

【批判的吟味】★★★
非常に切実なネタを扱った興味深い論文でした。封筒法でランダム割付し、閉創前に開封してぎりぎりまで術者を盲検化したり質を高める工夫もされています。ただ何分14年前の論文ですし、方法論としてはかなり改善の余地あり。RoB 2に照らしますと、

1.割付けの隠蔽化 Low risk 
2.割付けの盲検化 Low risk
3.アウトカムの追跡 High risk
4.評価者の盲検化 High risk
5.選択的な報告 Some concerns

と、RCTとしての質は残念ながら低いです。細かなところはさておき、手術侵襲や並存症について「有意な偏りはなかった」としか示されておらず実際どうなのかわからないし、解析は偏りを考慮したものではありません(一応Low riskになりますが)。アウトカムの評価が全例ではない(疑い例だけ)のようですし、疑わしいかを評価する者の盲検化は恐らくなされていません。プロトコルも事前に公表されていませんし。さらにいうと、肝心な有害事象の情報がないので「益が害を上回るはず」という仮説が検証できていないです。

【コメント】
なので本研究のみをもって「希釈イソジン層内洗浄の有効性」に結論はだせないのですが、RCTを組みやすい臨床疑問だし、次の研究につながる意義のある結果といえるでしょう。ただ、実はそもそも発生頻度が低い合併症についての研究に、金と時間がかかるRCTは適さないです。その後この疑問は解決されたのでしょうか?