そろそろお手本となるような論文を読んでみよう!と四大ジャーナルのうち観察研究の採択が最多で、いつか挑戦したいな!という憧れのThe BMJ(最新IF23.3)で脊椎ネタを探してみました。すると本年3月に、オランダの健康科学の先生から慢性腰痛の研究が。

Benefits and harms of spinal manipulative therapy for the treatment of chronic low back pain: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials.

臨床疑問  :慢性腰痛に対する脊椎マニュピレーション(SMT)の効果と害は?
研究デザイン:Systematic Review
セッティング:全世界

P 慢性腰痛
I SMT(モビライゼーションも含む)
C 他の治療(推奨されるもの、推奨されていないもの)、シャムSMT 
O 主要:腰痛の強さ(100点満点で平均差を比較)
      機能障害(標準化平均差SMDを比較)
  副次:有害事象
*エンドポイントは1M、6M、12M

SMTについては相当エビデンスが蓄積されているものの、慢性腰痛の治療ガイドラインにおけるSMTの推奨度が一貫していない(第一選択から、非推奨まで様々)のでまとめてみました!という論文。結果は47のRCT(計9211人)が包含され、要約すると

・SMT vs 他の推奨される治療
 腰痛の改善において1Mと6Mで約3/100点、12Mで約2/100点SMTが優れてそう
・SMT vs 他の推奨されていない治療
 腰痛の改善において1M、6M、12Mいずれも約7/100点SMTが優れてそう
・有害事象についてはよくわからない
 1件だけSMTに関連する深刻な合併症が報告(詳細不明)

などがメタアナリシスで示され、SMTは慢性腰痛に対し他の推奨される治療と同じくらいの効果、推奨されていない治療より優れた効果が(とくに短期間は)期待できる、との結論。さらに、もうある程度エビデンスは蓄積されてるから、手技が更に進歩した場合や、よっぽど質の高いRCT以外は不要だからするなよ!というメッセージ。

【批判的吟味】★★★★★
研究の質について述べますと、実は著者らが2011に行ったコクランレビューのアップデートで、当然PRISMAガイドラインCochrane reviewの手法に準じており、私ごときが指摘できることは何もなく、現時点でエビデンス総体を最もよく表す報告といえるでしょう。てかアップデートで更に大きな雑誌に載ったりするんだ…

【コメント】
正直な感想としては、ガチのシステマティックレビューは掲載されるデータも多く読みにくい、効果の指標であるSMDや、フォレストプロットとか、臨床研究かじっていない臨床医には敷居が高すぎてちゃんと読む人殆ど居ないんじゃないかな…(私も普段の数倍くらい時間がかかり、ブログに挙げるつもりじゃなかったら諦めたかも)。研究するためにも当然重要ですが、論文読むためにも臨床研究力が必要です。