慢性腰痛はcommon diseaseでありながら、未だにわからないことだらけです。慢性腰痛について検討したアメリカ発の論文がSpine最新号にでていましたので紹介。

The Relationship Between Endplate Pathology and Patient-reported Symptoms for Chronic Low Back Pain Depends on Lumbar Paraspinal Muscle Quality.

研究疑問  :終板損傷による腰痛は、傍脊柱筋(PSM)変性の影響を受けるか
研究デザイン:横断研究
セッティング:カリフォルニアの1病院?

P 成人52人(18歳~70歳、BMI<40)
E1 PSM変性大+終板損傷あり
C1 PSM変性小+終板損傷あり
C2 PSM変性小+終板損傷なし
O 慢性腰痛
*Pは38人の慢性腰痛患者と、年齢と性別をマッチさせた14人の対照群
*DM、喫煙、担癌、種々腰椎疾患、骨粗鬆症治療などは除外
*PSM変性は多裂筋の脂肪変性度として定量(IDEAL法で測定)
*終板損傷の有無は軟骨性終板の有無で定義(UTE法で評価)
*慢性腰痛ありは3ヶ月以上持続し、VAS≥4もしくはODI≥30と定義
*慢性腰痛なしは腰痛既往なく、VAS≤1と定義

モディック変性や傍脊柱筋力と慢性腰痛の関連が示唆されるものの、先行研究の結果は一貫していない。これは交互作用を考慮していないからだろう。終板損傷による慢性腰痛の程度にはPSM変性が影響する(量的交互作用がある)気がするので検証してみました!という論文。結果は終板損傷ありの慢性腰痛におけるオッズ比は26.1と非常に高く(モディック変性と椎間板変性度で調整)、L4/5高位の終板損傷に注目すると、PSM変性大だとオッズ比17.3と強い関連がある一方、PSM変性小だとオッズ比2.7と関連が弱かったというもので、終板損傷とPSM変性には交互作用があり、終板損傷があってもPSMに対する介入は効果があるだろうという結論。

【批判的吟味】★★
慢性腰痛について研究しようという心意気には賞賛しかありません。ただ科学論文として構造化されていないため、正直読むのが疲れ、まとめるのが困難(何度断念しようと思ったか…)。申し訳ないけど時間がもったいないので考察は読みません。内容も細かなところはさておき

・Pから1<VAS<4の対象が抜かれているため、源泉集団がイメージできない
・そもそも仮説(交互作用)を検証する構造になっていない
・Resultsの殆どがMethods にない解析
・明らかにP値探検隊(P値が出るまで検定しまくり)
・ロジックに一貫性がなく、結語も飛躍し過ぎ

などなど、残念ながら悪い見本のような論文。Level of Evidenceは4と低く、結果もどう臨床に活かせばいいかわからないので、ミスリーディングの悪影響は少なそう。重要なテーマだし★★にしましたが、兎に角疲れました。

【コメント】
研究者自身がよくわからないまま書いていて、査読者は煙にまかれた状態で何となくOKしてしまった感が否めません。これもある意味論文通す一つのスキームになるんでしょうか。ただどうせやるならエビデンス総体に少しでも貢献する研究を...