仕事が遅いのでヒイヒイ言いながら博士後期課程の研究デザインを進めており、現在主要アウトカム尺度をSF-36にするのか、より特異的なRMDQにするのか悩んでいます。日本人なのでJOABPEQも無視できないし~など思案していたら、RMDQを主要アウトカムにしたEA星5つのRCTがBMJ様から。トップジャーナルに脊椎関連論文でたら、勉強がてら読まない手はないでしょう。てかModic change(MC)に抗生剤って一体どういう研究なんだろう...

Efficacy of antibiotic treatment in patients with chronic low back pain and Modic changes (the AIM study): double blind, randomised, placebo controlled, multicentre trial

研究疑問  :抗生剤は椎間板ヘルニア(LDH)後のMCを伴う慢性腰痛に
       効果があるか?
研究デザイン:RCT
セッティング:ノルウェー6病院

P LDH後にMC(Ⅰ/Ⅱ)を伴う慢性腰痛患者180人
I  アモキシシリン(250×3/日)
C ブラセボ
O 主要:開始1年後のRMDQ
   副次:ODI、腰痛/下肢痛NRS、EQ-5D、有害事象
*慢性腰痛の定義は6ヶ月以上持続し、NRS≥5
*ヘルニア手術後1年以内、1ヶ月以内の抗生剤使用は除外
*MCと手術で4層のブロックランダム割付
*主解析対象はITT集団
*共分散分析でベースラインRMDQ値、MCタイプ、手術の有無を調整
*RMDQ欠測は多重補完
*MICD=4でサンプルサイズ計算
*中間解析でRMDQ差7以上になれば試験終了の計画
*Bang blinding index(実際の割付結果と参加者の予想の一致)も施行
*統計家がRで、院生がSTATAで独自に解析し結果を比較

腰痛の治療は大変で、現在研究者たちは治療効果が期待できる腰痛のサブ集団を特定しようと頑張っている。中でも以前から注目されているのはMCであり、一部に細菌の関与が指摘されている。MCがある腰痛に抗生剤が効果的であることを示したRCTが1つあるが(RMDQで8.3の差)、色々問題あり、治療としては推奨されないままである。そこでキチンとやりなおしてみました!という論文。1年でのRMDQ差は-1.6(-3.1, 0.0)となり、副次解析や感度解析の結果も同様で本研究をもってアモキシシリンの使用を支持することはできないとの結論。

【批判的吟味】★★★★★
プロトコル論文が出版されていたり、思いつく準備が全てなされている質が高いRCTだと思います。さすがBMJ様...生物統計家など、複数の研究者でチーム作らないとできない研究ですね。考察も
 Principal findings
 Comparison with the previous study
 Clinical relevance
 Limitations and generalisability
 Balancing the trial findings
 Conclusions and policy implications
の小見出しでよく構成されており、非常に読みやすいです。RoB2

1. 割付けの隠蔽化 Low risk
2. 割付けの盲検化 Low risk
3. アウトカムの追跡 Low risk
4. 評価者の盲検化 Low risk
5. 選択的な報告 Low risk

と、RCTとしての質は言うことないです。いつか自分でRCTもしてみたいので、是非お手本にします。著者に直接メールしてみようかな。プロトコル論文も読まなければ...

【コメント】
ここまですればBMJは載せてくれるんでしょうけど、相当大変...現実的な目標はちょっと端折ってJBJS狙いかなぁ(最近rejectされましたけど涙)。ちなみにアブストにintroがない。BMJ全部そうなんかな?質は非常に高い論文ですが、EA評価が高くないのは結果が負けているからか。