本日は恐らく論文を読む時間がとれないので、朝イチ頑張ってみました。Spineで面白そうな論文を探しているととんでもないネタが... 

Delayed Penetration of the Thoracic Aorta by Pedicle Screws: A Case Report of Screws Left As-Is.

研究疑問  :動脈に刺さった椎弓根スクリュー(PS)抜けなくても何とかなるか?
研究デザイン:症例報告
セッティング:イスラエルの大学病院

P PSが大動脈に刺さった人 1人
E PS抜かず
C PS抜く(反事実)
O 生命予後

椎弓根スクリュー外すことはあるけど、大血管に刺さることは極めて稀。刺さると出血して大変なことになるか、背部痛の原因になる。いずれにしろ普通抜くけど、抜けないこともある。抜けなかった人がどうなったか知りたいでしょ!という研究。症例は以下のとおり。

症例 :65歳女性
既往 :高血圧、肥満
原疾患と手術 :T7/8化膿性脊椎炎で除圧固定(T5-10)
経過 :麻痺は残存し車いすADL、尿カテ留置。脊椎術後すぐ左膝人工関節も感染し下肢切断。3年後には右下肢も切断。脊椎創部の感染徴候はなかったけど、CRPはずっと陽性。経過観察中に左T6とT9のPSの位置がおかしいことに気付いたけど、CTではPS感染や誤挿入はなし。T7の後弯が進行した時に両PSが胸部大動脈を穿通。血管外科は全身状態的に手術はできないと判断し、そのまま抜かず。その後3年間無事だった。
考察 :PS抜いてステント入れても、術後ステント移動したら怖いし、大血管をクランプして刺さったPS抜くのは侵襲が高い。術者にも患者にも恐怖が残るけど、抜かないのも選択肢になり得る。

【批判的吟味】★★
どう紹介するか迷いましたが、一応PECOの形にしてみました。というか、後弯のせいで穿通ってどういうこと?X線では椎体に何か入ってるけど何?術直後の画像は?CTのAxiは?患者は3年経ってどうなったの?など欲しい情報がなく(意図的に隠され?)て非常にモヤモヤします。ホントに遅発性の穿通なら、PSが最初どういう位置だったかの情報は必須でしょう(明日は我が身、と自身の臨床に活かせるので)。あと一応症例報告のガイドラインであるCAREに照らし合わせた改善点としては

 ・Key word内に「case report」がない 
 ・既往の記載が乏しい(絶対もっとある)
 ・予後の情報が乏しい
 ・研究の強みと弱みに関する考察がない
 ・患者の同意に関する記載がない

といったところでしょうか。まぁ、兎に角インパクトで載った報告でしょうからあまり言うのもナンセンスでしょうけど。

【コメント】
せっかく公表するなら、もうちょっとちゃんとやって欲しかったです。非常にモヤモヤします。やっぱりなんだかんだ小一時間かかるなぁ。毎日1時間の確保は物理的に不可能なので、読んだ論文全部公表は無理だ...