まだITS通信講座40%ちょっとしか終わっていませんが、現時点で取り掛かっている研究の解析まで最低限できるようになりましたし、受講期限もまだ1ヶ月あるので、ちょっと休憩。Spine最新号に載った論文を「ジャケ読み」してみます。やっぱり脊椎関連の論文の方がヤル気がでます。

Cervical Spine Fractures Who Really Needs CT Angiography?

研究疑問  :頚椎骨折新規アルゴリズムは不要なCTAを減らせるか?
研究デザイン:過去起点コホート
セッティング:ピッツバーグ外傷センター
*既存のアルゴリズムは以下
 - ACS(American College of Surgeons?)基準
 - ACSに神経所見を加えた?拡張Denver Criteria(EDC)
*新たなアルゴリズム(PA)の詳細は以下

大基準
1.高エネルギー外傷
2.意識消失あり
3.精神状態の変化もしくは気道確保困難
骨折基準
1.横突孔骨折
2.C1C2の複合骨折
4.両側facet骨折
3.facetの破綻

大基準でYES≥2  CTA
大基準でYES=1 →骨折基準でYESがあればCTA
大基準でYESなし CTAしない

P 外傷センターを受診した頚椎骨折 721人
E PAで評価
C1 ACSで評価
C2 EDCで評価
O CTA必要と判断した数
*受傷1D以上経過、脳血管損傷が明らかな例は除外
*CTAは全例ではなく、PA基準を満たした例+脊椎外科医の判断で追加
 - 417人(58%)

頚椎骨折がある場合は椎骨動脈鈍的損傷(BCVI)に注意すべきだが、CTAを撮りまくっても偽陽性は多いし、対象を絞る必要がある。既存のクライテリアはもう一つなので、ウチで使っている非脊椎外科医用の2段階アルゴリズムを既存のACSやEDCと比べてみました!という研究。CTAを必要としたのはPA 261人 (36.2%) vs ACS 413人 (57.3%) vs EDC 417人 (57.8%)とPAが最も少なく、結局stroke起こしたのは7例(すべてPA陽性でCTA施行=見逃しはなし)で、PAは不要なCTAを減らせて有用でしょうとの結論。

【批判的吟味】★★
研究目的、アウトカムや比較の方法などが構造化されていないので、「どういう研究」なのか掴みどころがありません。最終的にみたいのが「Stroke」なのか、その手前の「BCVI」なのかもはっきりしませんし。前者をアウトカムにするなら7例だけなので数が少なすぎるし(ほんとはこれしたかったんでしょうけど)、「BCVI」なら、CTAした(BVCIの有無が確認できた)のが全体の60%弱しかいないので評価不可能です。

要するに、「データをとってから考えた研究」あるあるで、無理して結果(P値)出そうとしてロジックが壊れてしまっています。わかりやすいし、臨床では是非PA使ってみたいのですが、残念ながら本研究からPAの良し悪しを論じることはできません。まぁ頚椎骨折後の遅発性Stroke発生割合が1%くらい?ってのは興味深い数字ですが。

【コメント】
ウチではこんなことやっていますよ!的な介入が科学的根拠なくSpineのエビデンスになったという事実。本件は臨床的にも問題なさそうですが、このパターンで誘導的(恣意的)なエビデンスが出る可能性もあるってことで、EBMの信頼度って今後どうなっていくかちょっと不安になる論文でした。Spine数打てば当たるかも…開き直って書きまくる?