先日に続き、現在企画中の研究の関連論文を。脊椎外科医には馴染みが薄いですが、慢性期医療のhigh IF雑誌であるJAMDA(2018IF4.9)に2017年掲載の京大老年内科の研究。

Self-Assessed Kyphosis and Chewing Disorders Predict Disability and Mortality in Community-Dwelling Older Adults

研究疑問  :①脊柱後弯・咀嚼機能低下はフレイルと関連するか?
 ②脊柱後弯・咀嚼機能低下は要介護発生と関連するか?
       ③脊柱後弯・咀嚼機能低下は死亡発生と関連するか?
研究デザイン:①横断研究 
 ②③前向きコホート研究
セッティング:Kami town在住者(どこ?)
*2013年にベースライン測定、追跡は3年間

P 65歳以上の自立者 5401人
E1 後弯+咀嚼機能低下
E2    後弯 or 咀嚼機能低下
C  どちらもなし
O  フレイル / 死亡 / 要介護発生
*メールで質問、返事がない場合は訪問し5094人 (94.3%)を追跡
*基本チェックリストでフレイルを測定
*脊柱後弯/咀嚼機能低下の有無は「はい/いいえ」の2択質問
*フレイルとの関連はロジスティックモデル、
 死亡もしくは要介護はコックス比例ハザードモデルを用い年齢・性で調整

強い後弯は痛み、転倒、骨折や呼吸機能・身体機能・QOLの低下ひいては死亡と関連することが報告されている。また咀嚼機能はQOLのリスク因子である。ので、地域コホートで後弯変形と咀嚼機能が将来の要介護や死亡と関連するかを検証しました!という研究。結果は(フレイルは割愛)

・分布はE1群 8.9%、E2群 40.3%、C群 50.8%
・3年の追跡で死亡は5.2%、要介護発生は13.9%
・C群を基準とした調整ハザード比は
 - 要介護:E1群 2.0 (1.5, 2.4)、E2群 1.3 (1.1, 1.6)
 - 死亡:E1群 2.3 (1.5, 3.3)、E2群 1.5 (1.1, 2.0)

  となり、後弯や咀嚼機能低下は死亡や要介護発生のリスクであるとの結論。

【批判的吟味】
★★★
シンプルで非常にわかりやすく、きれいな研究です(フレイルについての横断部分は不要な気がしますが)。なぜ後弯と咀嚼機能を要因として組み合わせたか?のつかみはちょっと弱いものの、こういう読者に優しい研究は素晴らしいと思います。ただ星3つにしたのは要因の誤分類と未測定交絡の多さです。本人にあり/なしを質問した結果だけで後弯や咀嚼機能低下を定義するのはさすがに無理があります(limitationにも書いていますが)。また死亡や介護に関連する因子は非常に多く複雑ですが、調整した共変量が要因と年齢・性だけはちょっと厳しい。あとセッティングやコホートの説明がないので、研究集団の代表性を考えることができないのも残念。純粋な前向き研究なのか、多目的コホートの二次利用かもわかりませんし(書かないということは後者でしょうけど)。

【コメント】
誤解を恐れず書きますと、これでIF5近くってのは夢があります!脊椎の専門誌より投稿先としては適当なのかも。頑張って研究して、このくらいの雑誌を目指したいですね。脊椎外科医にアピールするなら変にSpineとか目指すより日本の英語誌でいいかも…