「腎機能障害(CKD;ステージ3以上)がある骨粗鬆症の薬物治療」のReview2本目、2007JBMR(2018IF5.7)掲載の論文です。いまやFirst choiceになっているアレンドロネートの効果をみた、歴史に残るFIT研究(FIT1;Lancet1996、FIT2;JAMA1998)全体を腎機能でわけたサブグループ解析。

Alendronate Treatment in Women With Normal to Severely Impaired Renal Function: An Analysis of the Fracture Intervention Trial

研究疑問  :アレンドロネートの効果は腎機能によって異なるか?
研究デザイン:RCT(のサブグループ解析)
セッティング:米11施設

P1 閉経後骨粗鬆症女性 eGFR≥45ml/min 5877人
P2 閉経後骨粗鬆症女性 eGFR<45ml/min 581人
I アレンドロネート 5mg/D 2Y(1Yで10mgに) 
C ブラセボ/D 2Y
O 主要 :臨床的骨折(4.5Y)
   副次 :他の骨折、骨密度、骨代謝マーカー
安全性:vital sign、血液検査、有害事象など

【方法の詳細】
・包含基準の詳細
 - 大腿骨頚部 ≤ 0.68 g/cm2
・除外基準
 - Cr > 1.6 mg/dl、骨代謝異常、骨粗鬆症治療歴など
・施設で層別したブロックランダム化(サイズ10)
・Ca摂取<1000mg/日にはCaとVD処方
・椎体骨折48Mは放射線科医がGenant分類で評価
・骨密度は大腿・腰椎を12, 24, 36, 48Mで測定
・解析対象はITT
*細かな解析法は割愛

【結果と結論】
結果のまとめは以下のとおり
・P1<P2でBMD増加効果が高かった
 (4.8% vs 5.6%; p=0.04)
・IはCより6.6 ± 5.6%BMD増
 - が、治療前BMDの高低で効果はかわらなかった(p=0.75)
・骨折減少効果はP2でOR 0.78 (0.51, 1.21)、
 P1でOR 0.80 (0.70, 0.93)
 - P1とP2で効果に差はみられず(p=0.89)
・P1とP2で有害事象の発生に差はみられず 

よって腎機能低下の有無に関係なく、アレンドロネートはBMDを増やして骨折を減らす効果があるとの結論。

【批判的吟味】★★★★★
P2(腎機能低下群)はnが少なく「有意差」はでなかったものの、P1との交互作用のP値が大きかったり、推定値がP1と一貫してそう!ということで、「効果あり」との解釈でしょうか。これが10年以上前にJBMRに受け入れられているのは興味深いです。RoBは(RoB2ではなく、RoB1にて)、

1.割付けの盲検化 Low risk
2.割付けの隠蔽化 Low risk
3.参加者/治療者の盲検化 Low risk
4. 評価者の盲検化 Low risk
5. アウトカムの追跡 Unclear
6. 選択的な報告 Low risk

と、RCTとしての質は高いです。P各群でのI/C割付数や各欠測数についての情報はないので「アウトカムの追跡」はUnclear。ただLancet1996もJAMA1998も追跡割合90%超だし、I/Cで差はなさそうなので実際はLowの評価でもいいのかも。ここもどう判断するか擦り合わせが楽しみです。

【コメント】
やっぱりデータ抽出など入れると3-4時間平気でかかります。共同研究者でもこの労力、やっぱりガチのSystematic reviewはタイヘンです。この研究でも椎体骨折の判定はGenant分類(放射線科による読影のみ)、より臨床的な判定方法を確立する必要があると切に感じます。あと2本火曜までにやらなきゃ...外出自粛かもしれないけど、そもそも外出する時間ねぇ…