現在執筆中の論文ドラフトを教員先生方に添削していただきました。大分イイ感じだな!と密かに思っていたところ、的確なご指摘でボロボロに。いつになったら一人前になれるのか不安しかない…ですが、気を取り直して(今更)先行研究を深読みしてみます。以前紹介AIMの論文の著者である、Kado氏が後弯関連の研究の第一人者である模様。先駆けて発信されたJAGS(2018IF4.1)の2004年の論文を。
Hyperkyphotic posture predicts mortality in older community-dwelling men and women: a prospective study.
研究疑問 :後弯は死亡と関連するか?
研究デザイン:前向きコホート研究
セッティング:Rancho Bernardo(米)
*1972-1974に先行コホート研究
- 30-79歳6629人(82%)を対象
- 1988-1991に生存者に追試を提案
- 80%が同意し、1997.1月まで追跡
P 地域住民 1353人
E 後弯姿勢あり
C 後弯姿勢なし
O 死亡発生(平均4.2年追跡)
*後弯姿勢の判定はブロック法
- 放射線台に仰臥位で測定
- 顔面が台に平行になるように体位をとる
- 平行になれなければ、1.7cmブロックを追加
- 1個でも入れば後弯あり
*生存を毎年確認
- 1997.1月時点で80.5%を追跡
*死者の96%の死亡診断書を取得
*解析にはCox比例ハザードモデルを使用
- 交絡因子はbackward selection(p<0.1)で選定
- 年齢、性、BMI、OA、喫煙習慣、歩行習慣、登り困難、不安感を採用
<結果のまとめ>
・後弯は男性に多かった(44% VS 22%; P<0.001)
・最終モデルのハザード比 1.40 (1.08, 1.81)
・性別と後弯の交互作用P=0.53
・後弯ありの死因は動脈硬化が多かった
となり、高齢男女において後弯姿勢は早期死亡のリスクであるとの結論。
<Introのまとめ>
・後弯と病的状態が関連するので、死亡と関連するかも。
・2つの先行研究は交絡の調整が不十分
・簡便なブロック法で測定した後弯が死亡と関連するか?
<考察のまとめ>
・多くの変数で調整した頑健な結果
・男女ともに後弯は死亡と関連
- 女性のみリスクという知見に反する結果
・後弯割合は既報では女>男、本研究では男>女性
- ブロック法は頚椎と胸椎の後弯を反映
- 頚椎後弯が男性に多いため?
・後弯姿勢は骨粗鬆症のせいと考えられている
- すなわち後弯と死亡の関連は骨粗鬆症の代替
- でも骨粗鬆症で調整して結果がでたのでおかしい
・なぜ後弯は独立した死亡リスクなのか?
- 身体的加齢の指標だから?
- マウスの実験で示されている
・その他の原因は?
- 既報にあるとおり、肺機能かも
- 新たに後弯と動脈硬化死亡との関連が示された
<強みと弱み>
Limitation
・中流階級以上の白人が対象
・椎体骨折を調整していない
・残余交絡
・死因別の解析には検出力が足りない
・死因の誤分類
Strength
・骨粗鬆症に関係なく地域住民全体を対象
・男女を組み入れ
・ブロック法は簡便で臨床利用しやすい
【批判的吟味】★★★★
私がやりたいことが16年前にもうなされてました…よく作り込まれた研究。弱点を探してadd onするロジックじゃないと、発信できません。頑張ってアラを指摘するとしたら
・追跡割合80.5%はちょっと物足りない
・参加呼びかけ(1700 人?)は地域人口の20%くらい?
- 代表性の問題
・ブロック法の誤分類
- 免荷で測定、腰椎後弯が考慮されない
・Backward serectionで交絡因子決めるの微妙
・後弯-死亡のメカニズムが浅い
でしょうか。うーん押しに欠けるなぁ。いい研究です…
【コメント】
自分の研究結果の問題を述べて、それを改善した次の研究をやって、第一人者としてAIMに総説も書いて、、と研究者の鑑のようなKado先生。たいへん参考になりました。ただ脊椎外科医としては、仰臥位で後弯測る時点でオイオイ!と思うわけで、ここをうまく英語で表現できればいい研究になるはず、頑張ってみるしかないです。というか、今更ロジック練り直すとかしてる時点でダメダメな気が…いや、これも勉強(修行)…
Hyperkyphotic posture predicts mortality in older community-dwelling men and women: a prospective study.
研究疑問 :後弯は死亡と関連するか?
研究デザイン:前向きコホート研究
セッティング:Rancho Bernardo(米)
*1972-1974に先行コホート研究
- 30-79歳6629人(82%)を対象
- 1988-1991に生存者に追試を提案
- 80%が同意し、1997.1月まで追跡
P 地域住民 1353人
E 後弯姿勢あり
C 後弯姿勢なし
O 死亡発生(平均4.2年追跡)
*後弯姿勢の判定はブロック法
- 放射線台に仰臥位で測定
- 顔面が台に平行になるように体位をとる
- 平行になれなければ、1.7cmブロックを追加
- 1個でも入れば後弯あり
*生存を毎年確認
- 1997.1月時点で80.5%を追跡
*死者の96%の死亡診断書を取得
*解析にはCox比例ハザードモデルを使用
- 交絡因子はbackward selection(p<0.1)で選定
- 年齢、性、BMI、OA、喫煙習慣、歩行習慣、登り困難、不安感を採用
<結果のまとめ>
・後弯は男性に多かった(44% VS 22%; P<0.001)
・最終モデルのハザード比 1.40 (1.08, 1.81)
・性別と後弯の交互作用P=0.53
・後弯ありの死因は動脈硬化が多かった
となり、高齢男女において後弯姿勢は早期死亡のリスクであるとの結論。
<Introのまとめ>
・後弯と病的状態が関連するので、死亡と関連するかも。
・2つの先行研究は交絡の調整が不十分
・簡便なブロック法で測定した後弯が死亡と関連するか?
<考察のまとめ>
・多くの変数で調整した頑健な結果
・男女ともに後弯は死亡と関連
- 女性のみリスクという知見に反する結果
・後弯割合は既報では女>男、本研究では男>女性
- ブロック法は頚椎と胸椎の後弯を反映
- 頚椎後弯が男性に多いため?
・後弯姿勢は骨粗鬆症のせいと考えられている
- すなわち後弯と死亡の関連は骨粗鬆症の代替
- でも骨粗鬆症で調整して結果がでたのでおかしい
・なぜ後弯は独立した死亡リスクなのか?
- 身体的加齢の指標だから?
- マウスの実験で示されている
・その他の原因は?
- 既報にあるとおり、肺機能かも
- 新たに後弯と動脈硬化死亡との関連が示された
<強みと弱み>
Limitation
・中流階級以上の白人が対象
・椎体骨折を調整していない
・残余交絡
・死因別の解析には検出力が足りない
・死因の誤分類
Strength
・骨粗鬆症に関係なく地域住民全体を対象
・男女を組み入れ
・ブロック法は簡便で臨床利用しやすい
【批判的吟味】★★★★
私がやりたいことが16年前にもうなされてました…よく作り込まれた研究。弱点を探してadd onするロジックじゃないと、発信できません。頑張ってアラを指摘するとしたら
・追跡割合80.5%はちょっと物足りない
・参加呼びかけ(1700 人?)は地域人口の20%くらい?
- 代表性の問題
・ブロック法の誤分類
- 免荷で測定、腰椎後弯が考慮されない
・Backward serectionで交絡因子決めるの微妙
・後弯-死亡のメカニズムが浅い
でしょうか。うーん押しに欠けるなぁ。いい研究です…
【コメント】
自分の研究結果の問題を述べて、それを改善した次の研究をやって、第一人者としてAIMに総説も書いて、、と研究者の鑑のようなKado先生。たいへん参考になりました。ただ脊椎外科医としては、仰臥位で後弯測る時点でオイオイ!と思うわけで、ここをうまく英語で表現できればいい研究になるはず、頑張ってみるしかないです。というか、今更ロジック練り直すとかしてる時点でダメダメな気が…いや、これも勉強(修行)…
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