いま、以前からご相談いただいていたケースシリーズを(も…)やっています。観察研究の結果は(あまり)信頼できないですし、無理にP値計算したりするより、真摯なケースシリーズの方が正しいんじゃないか?と思う今日この頃。ただ、ケースシリーズはなかなか強いJournalには載らないし、お手本が少ないです。症例報告なら割と知られたガイドラインがありますが、ケースシリーズには…というわけで、無理やりフレームが似た先行研究を持ってきて読んでみることに。由緒正しきJNSの2015年論文です。内容はどうでもいいのでロジック重視で。

Utility of Dynamic Computed Tomography Angiography in the Preoperative Evaluation of Skull Base Tumors

研究疑問  :頭蓋底腫瘍手術に動的CTAは有用か?
研究デザイン:ケースシリーズ
セッティング:ハーバード大学病院?

P 頭蓋底腫瘍手術前に動的CTA/CTVを撮った64人
E 動的CTA/CTV撮影 
O 主要動静脈の描出
術式への影響

頭蓋体腫瘍の手術は大変だから、術前計画が重要。でも従来の画像評価では不十分だったので動的CTA/CTVはどうかな?と調べてみましたという研究。結果動的CTA/CTVはMRIよりいいし、血管造影より低リスクだし、ナビにも流用できるのでいいでしょ!という結論。
 
<方法の流れ>
・対象患者の説明
・撮影方法
・解析方法
 - 主要な動静脈が確認できるかを2人の外科医が判定
 - さらに、検査前後で手術戦略がかわったか検討
・線量の測定方法

<結果の流れ>
・背景情報の記述
 - 年齢、性別、病理の要約のみ
・血管の描出
 - なんと表とビデオ!(My PCでは見れないけど…)
 - Labbeは殆どみえるし、ほか重要な静脈も結構みえる 
・術式への影響
 - 25/64例 (39 %)が術式変更
 - 25例全員の詳細をTable 3に
・線量
 - 自験例の標準的CTAとの比較
・症例提示
 - 代表例3例(主に画像)

<考察の概略>
・頭蓋体腫瘍の手術では静脈が大事
・血管の特定について
 - CTAは優れているが限界があった
 - 動的CTAが登場したが、腫瘍手術に用いたdataはなし
・術式への影響について
 - 1/3以上の術式に影響
 - 1例だけ術中所見で変更(術前にわからなかった)
 - ルーチンで撮っているため選択バイアスは小さい
・ 線量について
 - ちょっとだけ線量がふえる
 - 線量を押さえる工夫が必要
 - 血管造影は侵襲があるし、術者の被ばくもあり微妙

【批判的吟味】★★★
なるほど!無理やりP値出したり、κ出したりしなくても単に症例報告して写真みせたり、割合示すだけでJNSに載るんですね。解析は血管が映ってるかどうか2人で数えただけと。Table 1も非常にシンプル。いくつか物足りないと感じるのは

・セッティングとその説明がない
・全体の手術数や、除外数の説明がない
・倫理審査の記載がない
・線量を研究外の自験例dataと比較
・研究と関係ないことを結語に書いている

などでしょうか。カテーテルより安全!と結語に書くのは無茶ですが、大きくケチつけるところもないし、臨床に役立ちそうな論文でした。

【コメント】
全体のフレームワークは非常に参考になりました。早速目の前の研究に活かして、ロジック組み立て直しです。それにしても、需要考えたらケースシリーズの指南書というか、ガイドラインあった方が便利ですよね。誰か作らないかな…