少し抱え込んでいるプロジェクトもひと段落したので、今のうちにSpineの論文を読んでおきます。方法論的にお手本になる論文は残念ながら少ないので、ネタ重視で。

Conservative Versus Operative Treatment of Stable Thoracolumbar Burst Fractures in Neurologically Intact Patients: Is There Any Difference Regarding the Clinical and Radiographic Outcomes?

研究疑問  :神経症状のない胸腰椎移行部破裂骨折は手術すべきか?
研究デザイン:過去起点コホート
セッティング:イスタンブール大学?2010-2016年

P 18-60歳のT10-L2のA3/A4骨折(神経症状なし)45人
E 手術あり 21人
C  なし(TLSO装具+安静) 24人
O  最終受診時の画像パラメータ・VAS・ODI・JOA・SF-36、入院期間
*除外基準は下肢骨折、2W以上後の手術など
*全例から同意取得
*割付方法は?
*解析はとにかく検定
*背景情報は年齢、性別、follow期間のみ

胸腰椎移行部破裂骨折の半分は神経症状アリ、半分はナシと言われている。ナシのAO分類のA3やA4に手術すべきかはわかっていないので、自験例を調べてみました!という研究。結果のまとめは

・局所後弯 E  4° vsC 11°
・後弯の喪失 E  2°  vs C  4°
・前方椎体高の喪失 E13% vs C18%
・後方椎体高の喪失 E  3% vs C  8%
・JOA、ODI、VAS、SF-36、入院期間は有意差なし

で、手術すれば画像パラメータは良いけど、臨床成績に有意差はでなかったとの結論。

【批判的吟味】★★
やりたいことはすごく共感できるのですが、エビデンスとしては残念ながらほぼ0です。手術の効果をみるにはRCT一択ですが、実現可能性を考えると観察研究もやむなし。ただ観察研究するなら相当しっかりやらないとエビデンスとしては発信できません。大きな弱点は以下のとおり。

・適応交絡を全く考慮していない
・Table 1.が少なすぎ(対象が骨粗鬆症じゃなくても、せめて骨密度は必要)
・多重検定
・アウトカム測定のタイミングが揃っていない
・研究内容伝えずに同意とるのは反則
・もう「有意差」という表現はやめよう

【コメント】
やっぱり害はないけど、益もないというか…So What?というか…臨床成績を真摯に見直すのは大切なことです。ただ折角やるならちゃんとやらないと勿体ないし、対象となる患者に失礼。無理して弱い研究採用しなきゃいいのに…自分のは採用して欲しいですけど。