EAで紹介されたSpine JのRCT(星5つ)を読みます。Spine JはSpineやJNS-Spineと比べると歴史が浅いものの、読み応えある論文がたまにあり、脊椎誌で一番IFが高いことには個人的には納得。査読料とったりJBJSの子分みたいな印象です。スカンジナビアでは60歳以上にはネジ入れないという記載にびっくりしたのでIntroもまとめてみます。

Randomized double blind clinical trial of ABM/P-15 versus allograft in noninstrumented lumbar fusion surgery

研究疑問  :ABM/P-15はstand alone PLFの骨癒合に効果あるか
研究デザイン:RCT
セッティング:デンマークの1病院?

P 60歳以上のネジなしPLFする1-2椎間の腰椎変性すべり 101人
I  ABM/P-15使用 49人126個所
C 同種骨使用 49人114個所
O 腰痛/下肢痛VAS、ODI、EQ-5D(12Mと24M)
癒合完成(12M)

【はじめに】
スカンジナビアではどうせ緩むし手術時間もかかるから60歳以上にinstrumentは使いません。そして基本局所骨を使うけど、どうせ骨質も悪いから同種骨もよく使います。でも保存も感染症チェックも面倒なので、いい人工骨があればそれがbest。rhMBP-2は骨癒合にはよかったけど、異所性骨化が大問題。その点ABM/P-15はよさそう。これまでACFやPLIFでの有効性は報告されているが、ネジなしPLFの報告がないので調べました。

【方法】
・紺野教授のLSSツール7点以上を対象
・封筒を用いたサイズ20のブロック法で1:1に割付
・サンプルサイズはODI差10、SD17で設計
・除圧はlaminectomyもしくはlaminotomy
・骨移植は横突起間
・術後軟性コルセット3ヶ月
・骨癒合は椎間毎に左右で2個所を数える
 - 第三者が、CTで骨架橋ありを癒合と判定
・解析は検定のみ
・ちなみに同種骨は754$、ABM/P-15は859$

【結果と結論】
・連続195人のうち基準を満たし参加に同意した101人をランダム割付(52%)
 - その後3人は再手術になり脱落
・癒合判定は脱落なし
 - 癒合はI群 63個所 (50%) vs C群 23個所 (20%), p<0.001
・PROsはI群3人、C群4人脱落(それぞれ6%, 8%)
 - 有意差なし

というわけでABM/P-15は癒合にはいいけど、臨床成績には反映されなかったとの結論。

【批判的吟味】★★★★
ゴチャゴチャ変なこともしていないし、読みやすくいい研究だと思います。結論も飛躍し過ぎず控えめなのも良心的。ただいくつか気になる点は

 ・ODI差10、SD17の出どころは?
 ・フローチャートが欲しい
  - 脱落した3人がどっちの群かの記載がない
 ・プロトコルについての記載がない?
 ・個人をランダム割付しているのに、骨癒合の対象は個所
  - 癒合割合について単純な検定は✕
 ・あくまでODIをベースに設計した研究
  - 骨癒合に関して強く主張することはできない
 ・有害事象がアウトカムに入っていない

などでしょうか。ぶっちゃけネジなしPLFは考えたこともなかったし、そもそもABM/P-15日本じゃ使えない?ので臨床に活かせる知見ではありませんが、色々興味深い研究でした。RoB2

1. 割付けの隠蔽化 Low risk
2. 割付けの盲検化 High risk 
3. アウトカムの追跡 Low risk
4. 評価者の盲検化 Low risk
5. 選択的な報告 Some concerns

RCTの質としてはまぁまぁかなと。術者の盲検化ができないので、後療法に差がでる可能性があり「2.割付の盲検化」はHigh risk。プロトコルにアクセスできない点は甘めにみてSome concerns。外科系のRCTは介入が一発で終了するので、群間のクロスオーバーがない点はバイアスリスク少なめになるんですね。

【コメント】
同種のtip boneでネジなし、横突起間移植、軟性コルセットで20%は癒合するんだ…そして50%も癒合するABM/P-15は侮れない気が。安全性が確認できたら使ってみたいです。というか、やっぱり癒合の有無はPROsにはそう関連しない?それとも尺度が粗くて測りきれていない?脊椎外科領域でまず最初に検証しないといけない(けど誰も切り込めていない)疑問はコレな気が…