今回はSpineのRCTを読んでみます。あまり深入りせずサラッと…中国産RCT×Spineは身構えてしまうのですが、台湾発なので期待。頚椎前方手術(ACSS)に関する研究。

Effect of Tracheal Intubation Mode on Cuff Pressure During Retractor Splay and Dysphonia Recovery After Anterior Cervical Spine Surgery: A Randomized Clinical Trial

研究疑問  :ACSS時の挿管経路は経鼻が良いか
研究デザイン:RCT
セッティング:台湾1病院

P 右進入ACSS
I  経鼻挿管
C 経口挿管
O 主要:最大カフ圧
   副次:術後発声障害
*ランダム割付は1:1の単純割付+封筒法
*発声は術後1,2,7,30日で測定
*発声障害は0-6点満点の尺度使用
*必要サンプルサイズは圧差10mmHg、SD17mmHg、欠測1/4で118人と計算
*解析は挿管経路で層別した混合効果モデル(中心にいろいろ)

ACSSの際経鼻挿管は顎先挙上がしやすく、術野が確保しやすそう。開創時の気道内圧が術後発声障害に関連しそう。経鼻だと経口より経路が自然で気道内圧が高くなりにくそう。これらの疑問をまとめて調べてみました!という研究。結果は

・最大カフ圧は経鼻 30 [12] mmHg vs 経口 18 [12] mmHg, p=0.46
・期間を通じての発声障害スコア差は 1.6 [0.36], p<0.001

などなどで、挿管経路差は最大カフ圧に影響しないものの、発声障害からの回復にはよいとの結論。

【批判的吟味】★★★
挿管経路と気道内圧の関係、気道内圧と発声障害の関係ひいては挿管経路と発声障害の関係をまとめてみるのはちょっとロジック的に厳しい(二兎を追う者は何とか…)。ほか大きなところで気になるのは

・主要アウトカムをカフ圧にする臨床的意義は?
・カフ圧差10mmHgの臨床的意義は?
・副次アウトカムに有害事象がない
・片群50くらいのサンプルサイズで色々やりすぎ
 - 何を一番やりたいのか不明瞭
 - 多重検定(図表だけでP値が40個以上…)
・結論で副次アウトカムについて主張するのは反則

など、研究の芯が定まっていないのが非常に残念でした。折角RCTするんだから、せめてもっと重要なアウトカムで、主解析はもっとシンプルにしたらいいのに…RoB2

1. 割付けの隠蔽化 Low risk
2. 割付けの盲検化 Low risk
3. アウトカムの追跡 Low risk
4. 評価者の盲検化 High risk
5. 選択的な報告 Some concerns

と、RCTとしての質はまぁまぁかと。口から挿管されたか、鼻から挿管されたか盲検化するのは現実無理でしょうから、アウトカム(発声スコア)への影響大で「4.評価者の盲検化」はHigh risk。追跡率93%は十分でしょう。レジストリに事前登録してるようですが、プロトコルへのアクセス方法が明示されていないのは気になります。

【コメント】
確かに高位やるときに顎邪魔になりにくいのはメリットかも。でも本研究とは関係ないし、鼻から挿管したら発声障害起こりにくそう!と思える内容ではありませんでした。RCTやるのは大変だし、崇高なことだけど、せっかくやるならもっとしっかりやらないと勿体ないし、参加者に申し訳ない…