久しぶりにEAをみたら結構たまっていたのでcheckすると、Spineから非常に興味深い論文が!日本からの論文はケチつけると申し訳なさすぎるので避けていたのですが、読まないわけにはいきません。EA評価がRCTなのに星4つしかないのは気になりますが、どうでしょうか?

Weekly Teriparatide Versus Bisphosphonate for Bone Union During 6 Months After Multi-Level Lumbar Interbody Fusion for Osteoporotic Patients

研究疑問  :テリボンは多椎間固定術後骨癒合に効果あるか
研究デザイン:RCT
セッティング:日本多施設

P 50歳以上の2椎間以上固定患者 109人
I  術後テリボン6W
C 術後ビスフォスフォネート6W
O 主要:固定尾側端椎間の骨癒合
副次:自己記入アウトカム(PRO)、骨代謝マーカー、BMD


高齢者に多椎間固定をする機会が増えてきた。骨癒合に寄与する後療法は切実で、テリパラチドに期待がかかっている。過去に単椎間では良さそうなことを報告した(JBJSのRCT)が、今回多椎間で検証しました!という研究。

【方法】
・置換ブロック法で中央ランダム割付
・盲検化された4人がCTで骨癒合点を採点
 - SagとColを各1スライス使用
 - 癒合完成1点、まぁまぁ2点、全然3点
 - 計2スライスなので2-6点(2点が完全癒合)
・完全癒合(2点)の割合も比較
・術直後CTでケージと骨の接触(BC)を評価
 - BCと癒合の関連性も検証
・研究外の単椎間固定との完全癒合割合も比較
・解析は検定

【結果と結論】
・脱落はI群5人 (10%)、C群5人 (9%)
・骨癒合点はI群 3.8 [0.2] vs C群 4.2 [0.2] p値記載なし?
・PROに差なし
・BMDや代謝マーカーにも差なし
・有害事象にも差なし
・BCありは癒合と関連
・完全癒合割合は単椎間 69% vs 多椎間 47%

結論は骨癒合に群間差はみいだせなかったが、BCは骨癒合と関連していたとの結論。

【批判的吟味】★★★
脊椎外科医なら誰もが興味あるネタで、多施設のRCT完投されたことに感嘆しかありません。全体的にシンプルで理解しやすく、素晴らしい研究だと思います。骨癒合の判定方法も勉強になりました。ただ恐縮ながら、方法論の面でいうともっと質を高められたのは残念です。できること全部やったらもう1つ上の雑誌いけたでしょうから…主なところは

・欠測の取り扱い、解析対象集団の詳細がない
・サンプルサイズの根拠がない
・プロトコルにアクセスできない
・各群プラセボ使用が可能だった
・C群はBP剤じゃなくプラセボが理想
 - BP剤に正負問わず効果があれば、結果を修飾する
・骨癒合点を単純に連続値として解析するのは不適当
 - なので癒合割合がよい(SRにも使いやすいし)
・P値が多すぎる(けど一番大切なP値がない)
・方法と結果が1:1対応になっていない

などなどです。全部直すのは倫理的にも難しいにしろ、必要不可欠なサンプルサイズ計算がない点、方法と結果が1:1対応していない点はとくに勿体ないです。RoB2

1. 割付けの隠蔽化 Low risk
2. 割付けの盲検化 High risk
3. アウトカムの追跡 Some concerns
4. 評価者の盲検化 Low risk
5. 選択的な報告 Some concerns

と、残念ながらRCTの質としては高いとは言えないかなと。割付結果が患者本人に盲検化できず、クロスオーバー含め両群10%前後脱落あり。解析も検定だけなので「2.割付の盲検化」は残念ながらHigh Risk、「3.アウトカムの追跡」はSome concerns。レジストリに登録してありますが、プロトコルにアクセスできないし、方法と結果が1:1対応じゃないので「5.選択的な報告」もSome concerns。

【コメント】
結果としては負けだったので、別RCTの必要性が益々高まりました。大学病院じゃないと難しいでしょうから、1脊椎外科医として是非次のRCTも期待したいです(他力本願)。私ももっと実力と実績つけて、いつか世界に発信できる研究に関わりたいです。