最近、長旅(5誌目)にでていた初代論文がついにSpineでrevisionにかかりました...何とかねじ込んではやく成仏させたいです。というわけで意気揚々と回答を8枚も作ったのですが、メンタリングで真っ赤っかになり、次週再見…疫学3年半勉強してまだこのレベルなのは悲しくなる今日この頃です。また一連のハナシは記事にしなきゃですね。今回はreviseの際に引用しようかな~という実需もかねて手術合併症の疫学研究を。昨年のSpineです(引用したらIFあがるし喜んでもらえ…)。

Can Elective Spine Surgery Be Performed Safely Among Nonagenarians?: Analysis of a National Inpatient Database in Japan

研究疑問  :高齢者の手術成績は?
研究デザイン:記述、過去起点コホート
セッティング:日本(DPCデータベース)
*2010.7月~2013.3月

P 予定脊椎手術患者(65歳以上)
E 1 90歳以上
E2 80歳代
C 65~79歳
O 主要:死亡(90D)、大合併症
副次:入院日数、退院先、死亡(30D)


超高齢化社会になり、80代や90代に脊椎手術を行う機会が増えてきた。ので実際どうか調べてみました!という論文。

【方法】
・救急患者は除外
・DPCから抽出した背景因子は
 - 年齢、性、BMI、喫煙、並存症、処方、手術部位、固定、麻酔時間、輸血など
・大合併症に含めたのは
 - 感染、心血管イベント、呼吸器疾患、敗血症、肺塞栓、脳卒中、腎不全
 - ほか尿路感染とせん妄も調査
・ロジスティックモデルで交絡調整
 - 病院で層化した一般化推定方程式を使用

【結果と結論】
・対象は88370人
・80歳代が19.1%、90歳以上が0.5%
・結果は(90歳以上 vs 80歳代 vs 65~79歳)
 - 90日死亡 1.7% vs 0.3% vs 0.2%
 - 大合併症 7.4% vs  5.0% vs 3.7%
・90日死亡のリスクは
 - 90歳以上 aOR 8.7 (3.6, 20.1) 
 - 80歳代 aOR 2.3 (1.6, 3.4)

というわけで、90歳以上はやっぱり合併症それなりにありますね、という結論。

【批判的吟味】★★★★
シンプルにビッグデータを解析した、わかりやすい研究!悉皆性のあるデータで疫学情報出すのは理にかなっています。日本発の論文はディスると失礼すぎるので敢えてあまり読まないのですが、勉強になりました…ってよくみたら東大SPHの康永先生の論文でした。失礼しました…

向学のためにLimitationとその言い訳もまとめますと
・合併症は過小報告される
 →でもEもCも条件は同じなので、比較の質にはそう影響しない
・入院データのみ(外来データがない)なのでやっぱり過小評価になる
 →でも平均3週間入院してるので、手術合併症は拾えるでしょ
・手術でよくなったかどうかのdataはない
・術式などの細かな情報はない、再手術や再入院もわからない

【コメント】
よし、この研究引用させていただきます!臨床疑問をちゃんと選べば、ビッグデータは強いですね~羨ましい。でも外科医としては、もっとネットリしたレジストリでマニアックな疑問を解決していきたいです。というか、90歳超えの手術は65歳以上の0.5%か…勤務先では数%いる気がするのは多すぎ!?