ちょっと間が空いてしまったので、一念発起して論文読みます。Spineの最新刊から、Modic Change(MC)と腰痛の関連をみたフィンランドの横断研究を。私が関わらせていただいたコホート研究とほぼ同規模のコホート研究です。

Association Between Modic Changes and Low Back Pain in Middle Age: A Northern Finland Birth Cohort Study

研究疑問  :MCと腰痛は関連するか?
研究デザイン:横断研究
セッティング:Northern Finland Birth Cohort 1966
*OuluとLaplandの1966年産まれの96%をカバーしているレジストリ
 - 14, 31, 46歳時に調査を行った
 - それぞれ追跡割合は94%, 71%, 57%
 - 46歳調査時にOulu在住1988人にMRIの案内

P 腰椎MRI撮った1512人(研究対象者の76%)
E MCあり 
C なし
O 重度腰痛、煩わしい腰痛

MCと腰痛の関連ははっきりわかっていなので調べてみました!という研究。

【方法】
・MCは高さ(4カテゴリ)、左右・前後幅で12のサブ 分類
・腰痛の測定は質問調査
 - 過去1年の腰痛の頻度、強さ、時間帯をNRS評価
・重度腰痛は「計1ヶ月以上で疼痛NRS≥6」
・煩わしい腰痛は「計1ヶ月以上で煩わしさNRS≥6」
・交絡は 喫煙、BMI、教育水準、椎間板変性、ヘルニア
・解析はロジスティック回帰
・検者間一致度も評価

【結果と結論】 
・重度腰痛については
 - 何らかのMC 1.5 (1.1, 2.2)
 - MC1 1.5 (1.1, 2.1)
 - 前後全体MC 1.6 (1.1, 2.2)
 - 終板全体MC 1.7 (1.2, 2.5)
 - MCの高さ 1.3 (1.1, 1.4)
・煩わしい腰痛については割愛…

というわけで、MCと腰痛の統計学的に重要かつ独立した関連性が示されたとの結論。

【批判的吟味】★★★
やられていることはシンプルでわかりやすく、貴重な地域住民の悉皆データであることも考えると、価値がある研究だと思います。とくにMCの有病?割合は今後も参考にできそう。ただ、最大の欠点は研究者に整形外科医(腰痛の診療に従事している人間)が入っていないこと。著者らの所属をみると、ヘルスリサーチ系のみです。なので、研究全体的に「緩い感じ」が否めません。具体的には

・たったこれだけの交絡調整で「独立した関連」とか無理
 - 脊柱変形やアライメント、既存骨折、LSS、手術歴 
 - ほか生活習慣、仕事、精神的要素など
・腰痛の定義が緩すぎ
 - MRIまで撮るなら、RDQなどのQOLもとれたはず
 - どんな腰痛?
・多重解析しすぎ

といったところでしょうか。これくらい緩い比較で点推定値1.5前後だと、単に偶然ふくめてバイアスをみているだけの可能性が高く、結果を真に受けることができません。ってそのまま自分にブーメランで返ってくる気がする…

【コメント】
このレジストリ、QOLとってないんでしょうか。MRI1500人(対象者の3/4)も撮って、しかも縦断のデータもあるならもっとすごい研究ができそう。前も見たことある気がするので、他にあるんでしょうか?この研究に限っては、勿体ない感が強かったです。触らせてもらえないかなぁ…