EAにでた脊椎関連のRCTをみておきます。自家骨にかわる移植骨はないか?という臨床疑問は古来より幾度となく検証されてきましたが、いったいどう新規性を出してSpine Jに採択されたのでしょうか?RCTでEA星5つはちょっと嫌な予感もしますが…

Randomized clinical trial: expanded autologous bone marrow mesenchymal cells combined with allogeneic bone tissue, compared with autologous iliac crest graft in lumbar fusion surgery


研究疑問  :TLIFで同種骨+間葉系幹細胞(MSCs)は自家骨に劣らないか
研究デザイン:RCT(PhaseⅠⅡ)
セッティング:スペイン5病院(2012~2017)

P 18~85歳のL4/5TLIF 73人
I  同種骨+MSCs
C 自家骨
O 主要:安全性(7D, 3/6/12M)
副次:骨癒合(3/6/12M)、痛み、QOL

自家腸骨が骨癒合にいいのはわかってるけど、いろいろ大変。代替物が色々考案されているが、基礎研究で有効性が期待される間葉系幹細胞付加同種骨について安全性など調べてみました!という研究。

【方法】
・サイズ4の置換ブロック割付
・MSCsは手術3W前に腸骨から採取した骨髄液から作成
・I群は10㏄、C群は20cc腸骨採取し、先ず10ccは椎間に移植
 - TLIFの対側横突起間にI群は同種骨+MSCs、C群は自家腸骨を移植
・骨癒合は独立した放射線科医が判定
 - Xpを用いたMolinari fusion scale ~APどちらか癒合で「癒合あり」
 - CTで架橋の有無 ~APそれぞれで癒合判定
・痛みはVASの変化量、QOLはODI/SF-36の変化量と定義
・サンプルサイズはMolinari1ポイントの検出で62と計算
 - α0.05、1-β0.8、脱落10%
 - アウトカム達成割合差30%の検出が可能
・安全性の検証は手術を受けた集団
・効果の検証はmFAS集団(Protocol逸脱なし、1回はCTあり)
・解析は単純な検定
 - QOL欠測は単回帰で?補完、脱落はLOCFで補完
 - Complete-caseで感度解析

【結果と結論】
・脱落は13人(18%)←mFAS
・I群88%、C群97%に何らかの有害事象(MSCs関係なし)
・癒合割合(I群 vs C群)は 
 - X線3M 71% vs 63% p=0.24 欠測16%
 - X線6M 68% vs 43% p=0.012 欠測25%
 - X線12M 76% vs 51% p<0.001 欠測19%
 - CTAP6M 71% vs 40% p=0.04 欠測14%
 - CTAP12M 71% vs 51% p=0.02 欠測7%
 - CTP6M 82% vs 46% p<0.001 欠測14%
 - CTP12M 76% vs 66% p=0.07 欠測7%
・痛み、QOLに差なし

というわけで、同種骨+MSCsは現実的で効果的な選択肢との結論。

【批判的吟味】★★★
固定術でちゃんと癒合するかは術者としては非常に気になるところ。自家腸骨より侵襲が小さくて効果的な移植骨は非常に魅力的です。でも細かく結果をみると怪しい点はチラホラあり、結果を真に受けることはできません。BSCs加えたら自分の骨より他人の骨の方がつく!なんて俄かに信じられませんし…どっちの群も椎間に自家骨入れてるのにこんなに差がつくのもピンときませんし。方法論として気になる点は

・効果の検証がmFAS集団じゃなく安全性の検証対象になっている
・欠測が20%前後あるけどその取扱いが曖昧
・癒合判定が緩すぎる
 - X線じゃ無理でしょ
 - 放射線科医じゃ厳しいでしょ
 - 疑わしきは癒合!じゃなくて非癒合!にすべき
 - 時間経過して癒合割合が下がるのはあり得ない
・サンプルサイズ計算に無理がある
 - Molinariスコア1差の検出って…
・多重検定
・臨床試験と言う割には、監査や中間解析がなく全体的に荒い

などなどです。RoB2

1. 割付けの隠蔽化 High risk
2. 割付けの盲検化 High risk
3. アウトカムの追跡 Some concerns
4. 評価者の盲検化 Low risk
5. 選択的な報告 Some concerns

と、RCTとしての質も厳しいです。ブロックサイズ4で固定だし、術者の盲検化はできないので「1.割付の隠蔽化」はちょっと厳しいけどHigh riskでしょう。脱落数にI/C差はなさそうですが、術者も患者も盲検化できないし、後療法についての情報がないので「2.割付の盲検化」もHigh risk。骨髄液じゃなくて末梢血でBSCsが造れれば患者は盲検化できるのですが…ガチでやるなら、術者と後療法の担当者を分けれれば、部分的に治療者は盲検化できます。アウトカムの欠測も結構多い(7~25%)ですが、適切に対処されたとはいえないので「3.アウトカムの追跡」はSome concerns。プロトコルにアクセスできないので「5.選択的な報告」もSome concerns。

【コメント】
そもそも棘突起と片側のfacetとれば局所骨だけで骨は結構でるし、よほどMISTにこだわらなければ同種骨は要らない気もします。MSCsにそんなに効果ありそうなら、局所骨+MSCs vs 局所骨で、もっとしっかりしたRCTやってくれないかなぁ。癒合割合を上げる努力は追及したいですから。ただ、本研究でも示されるとおり、癒合完成の有無は症状とは関連しないかもしれませんが…