最近臨床が忙しくなってきて論文読むペースが落ちてしまってますので、土曜日を利用してSpineの論文を読みます。Cervical laminoplasty:CLPの合併症の論文、今更感が否めませんがどこに新規性が見出されたか興味深いです。

Intra- and Post-Complications of Cervical Laminoplasty for the Treatment of Cervical Myelopathy: An Analysis of a Nationwide Database

研究疑問  :①CLPはラミネクや固定より安全か?
       ②術中モニタリングの効果は?
研究デザイン:過去起点コホート(データベース)
セッティング:米国PearlDiver Patient Record Database
*2007~2017年に2500万件のデータを格納

P CLPを受けた患者490人+マッチングしたラミネク/固定患者490人
E CLP
C ラミネク/固定
O 術中術後合併症、再手術

CLPはラミネクや固定と比して合併症が少ないことが期待できるが、実際どうなのか調べてみました!という論文。

【方法】
・合併症の観測時点は1・3・6・12M
・合併症は以下
 - 脊髄損傷、神経根損傷、硬膜損傷、創トラブル、
   深部感染、嚥下障害、新規頚部痛、四肢麻痺、
   再入院、死亡、DVT、肺塞栓、心筋梗塞、
   呼吸不全、肺炎、腎不全、敗血症、尿路感染
・再手術の観測時点は1・3M
・マッチングは年齢、性、並存症で計算した傾向スコアを使用
・主解析はロジスティック回帰??
 - 共変量として年齢、性、並存症を投入??

【結果と結論】 
・CLPは以下の点で優れていた(尺度はオッズ比)
 - 嚥下障害の低さ 0.37 (0.16, 0.79)
 - 再入院 0.51 (0.35, 0.75)
 - 尿路感染 0.58 (0.37, 0.93)
 - 創トラブル 0.28 (0.08, 0.79)
・術中モニタリングの使用は以下の点で優れていた
 - 1M四肢麻痺 0.52 (0.23, 1.19)
 - 3M四肢麻痺 0.51 (0.23, 1.11) 

というわけで、CLPはラミネクや固定より安全で、(有意差はつかなかったけど)モニタリングの使用は麻痺の少なさと関連していた、との結論。

【批判的吟味】★★
やりたいことには強く共感するのですが…研究としてのフレームがガタガタでちょっと厳しいです。結語も飛躍しすぎで…査読者の意見取り入れているうちに壊れてしまったのか?発生が少ない有害事象(合併症)をみるためにビッグデータ使うのは適切だと思いますが、サンプルサイズは大きくないですし、交絡の調整が全然足りないと思います。気になる点を列挙しますと

・Introの内容が薄くて、研究の意義がわからない
 - なぜ今更CLP?
・Methodsの内容が不十分
 - 何をしたいか?したか?がわからない
 - 「モニタリング」についての記載がない
 - PSマッチした目的も、詳細もわからない
 - なんで2500万件のデータベースで使用したのが年齢・性・並存症の3つだけ??
 - PSマッチに使った変数で更に多変量解析?
 - MultivariateじゃなくてMultivaliable
 - 相当な多重検定
 - 「統計学的有意差」はもう使わない
・「統計学的有意差」すらついていない結果を結語で主張

流行り(か?)の「データベース」「PSマッチング」を使った、「アメリカ発の研究」だから載ったという穿った見方をせざるを得ない、悲しい研究でした…この研究が「モニタリングの効果」として引用でもされたら…考察は読んでいませんあしからず。

【コメント】
「データベース」「PSマッチング」だけで掲載が近づくのはもう当分過去のハナシだと思っていましたが、もしかして脊椎領域ではこれから熱いのか!?前にSpine Jにrejectされたとき、査読してくれたVice editorから「PSスコア使いなさい」と言われたなぁ…介入の効果をみる研究じゃなく、要因の関連をみる研究なのに…Spine原始時代…