11月は一大イベントがあり、とくに前半はかかりきりで論文を読んでいませんでした。その期間に相当たまってきたEAを渉猟してみます。と、先日塩漬けにしたと述べたテーマに近いシステマティック・レビュー(SR)がSpineに出ている…これがしっかりしたSRなら、別のテーマを探さなきゃ(いずれにしろするのは大分先ですけど)…ということでサラッと読んでみます。

Orthosis in Thoracolumbar Fractures: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials

臨床疑問  :外傷性胸腰椎骨折に対するコルセットの効果は?
研究デザイン:Systematic Review
セッティング:全世界(~2019.6月)

P 急性期の外傷性胸腰椎骨折(合計267人)
I コルセット
C なし
O 後弯(6M/12M)、減高・VAS(6M)、入院期間
*Oに記載したのはメタアナリシス(MA)のみ記載
*Pubmed、Scopus、Cochrane Centralをkey word検索
*RCTのみを包含
*Risk of biasも評価
*PROSPEROに事前登録
*PRISMAに準拠

神経障害がない外傷性胸腰椎骨折にはコルセットが使われるが、そのRisk/Benefitはよくわかっていない。既存のSRは骨粗鬆症を対象にしたものや、2014年に2つのRCTを包含したものに限定されているので、改めてSRしてみました!という研究。結果は…

・重複を除いた1209研究が対象
 - Ti/Abスクリーニングで30研究
 - 本文checkで8研究(3つは学会報告)
 - 同一セッティングを除き最終的に5研究を包含
・後弯、減高、VASに差はなし
・1研究で12MのODI改善を報告(ただし24Mでは差なし)
・入院期間差はコルセット群が3日 (95%CI 1-6)むしろ長い

で、コルセットは保存的加療からの追加効果はない。この結果はガイドラインや政策に反映されるべきとの結論。

【批判的吟味】★★★
Spineでのエビデンスレベルは3と控えめですし、全体的に最低限のルールは守ってありキレイで読みやすい研究でした。これ以上改善する点もパッと思いつきませんが、気になる点を強いて挙げるなら

・検索式が物足りない(作り込んでも不変でしょうけど)
・全体的につかみや方法が浅い(深くやっても結果は不変でしょうけど)
・MAがMAX3研究267人で、「効果ない」とか結論づけるのは飛躍し過ぎ
 - 結論は「効果あるかどうかわからない」
・RoB評価が甘そう(細かなcheckはしてませんが)
・GRADE評価がない
・Benefitはわかったけど、Riskは?

そもそも外傷性の(骨粗鬆症じゃない)胸腰椎骨折でコルセットするかしないか迷う患者が対象なので、対象は結構限られるし、切実ネタか?というとちょっと微妙な気が。「成人」「急性期」「外傷性」「胸腰椎骨折」でくくってますが、T10 とL5では全然別の疾患ですし、骨密度や脊柱バランスなど非常に多様な領域。そもそもエビデンス不足が一目瞭然です。なので、できるできないは別としてやらなきゃいけないのはSRじゃなくて、質の高いRCTか悉皆レジストリ研究でしょう。

【コメント】
この完成度(決して低くはないです)なら、まだ「塩漬け研究」を復活させる余地はありそう。ただ、やらなきゃいけないのはSRじゃなくて、RCTか悉皆レジストリ研究なんですよね。自分にブーメランですが、色々な意味で敷居が高いなぁ…まずは実績と実力をつけるところから早急に…