最近全然論文読んでいないので、ちょっと一息つけそうなこの土日で1本読みます。日本発の論文はディスると申し訳ないので意図的に避けていますが、趣向をかえてご指導いただく教員先生がお手伝いされた論文をお手本として読んでみます。Eur Spine J(2019年IF2.5 / Orthopedics27位)に最近掲載の観察研究。

Sagittal imbalance and symptoms of depression in adults: Locomotive Syndrome and Health Outcomes in the Aizu Cohort Study (LOHAS)

研究疑問 :矢状面バランス不良とうつは関連するか?
研究デザイン :横断研究
セッティング :LOHASコホート
*福島県立医大整形と京大医療疫学が中心となって行っているコホート研究
 - 只見町・南会津町の国保/後期高齢者の7割が参加
 - 2008-2010にベースライン測定

P 2010年のX線検診に参加した地域住民
E1 高度バランス不良 SVA >95mm)
E2 中度バランス不良 (SVA 40-95mm)
C バランス良 (SVA <40mm)
O うつ症状あり (MHI-5 ≤60)

矢状面バランス不良を伴う成人脊柱変形とうつの関連は、病院を受診した「患者」においては報告されているが、「一般住民」ではわかっていないので調べてみました!という研究。

【方法】
・検診時のX線でSVAを計測
 - Surgimapを用い2人の研究者が手分けして計測
・調整する交絡は以下
 - 年齢、性、就業、独居、痛み、身体機能
・解析は完全例
・ポアソン回帰でリスク比(RR)を算出
 - 信頼区間の算出にはロバスト分散を使用
・性×矢状面バランスで6カテゴリ化したサブ解析も施行
 - デフォルトは男良
 - RR女高と(RR女良+RR男高-1)を比較して生物学的交互作用を検討
 - 性×矢状面バランスをモデルに入れて統計学的交互作用を検討

【結果と結論】 
・対象908人中欠測がない833人(92%)を解析
・矢状面バランスは高度不良4%、中度不良24%、良67% 
 - うち、うつ症状はそれぞれ41%、24%、19%
・調整リスク比は
 高度不良 2.3 (1.0, 5.2)
 中度不良 1.1 (0.7, 1.7)
・生物学的交互作用はなし
 RR女高2.0 に対し (RR女良1.2+RR男高1.6-1)
・統計学的交互作用はなし
 交互作用項のP=0.85

で、地域在住者において矢状面バランス不良とうつは関連したとの結論。

【向学のためにdiscussionの構成】
・性に関係なく矢状面バランス不良はうつと関連するかも
・先行研究の紹介と比較
・メカニズム
・手術をすれば良いというわけにはいかない
・Limitation
 - 横断研究なので因果を強く主張できない
 - セッティングが山奥なので一般化できるか
 - 矢状面バランスの誤分類
 - 矢状面バランス不良の原因はさまざま
 - 骨盤パラメータがないので代償の程度が不明

【批判的吟味】
ご指導いただいている教員先生の関わる論文なので、とても評価の★はとてもつけれません。よく構造化されていてとても読みやすいですし、いい研究だと思います(とか書くのも恐縮…)。生物学的交互作用、統計学的交互作用については改めて勉強しなおさなくちゃ…あとオッズ比よりリスク比の方が解釈したいので是非そうしたいですが、ポアソン回帰>ロジスティック回帰でいいのかな?使うのは簡単ですがやっぱり勉強しなおさないと、はっきりしたことが言えません…よし、以前ロジスティック回帰についてまとめたので、次はポアソン回帰についてまとめてみよう。

【コメント】
教員先生が関わった論文、勉強になります!恐れずもっと読んでまとめていこうと思います。多分苦戦されてESJということなのでしょうが、もっとインパクトある雑誌にどんどん載るようにならないかなぁ…決してESJが悪い雑誌というわけではないですが。自分も2本投稿中(under review)ですし汗…