本日は私の人生の転帰ともなった臨床研究デザイン塾でした。コロナ渦の影響でWeb開催になったのですが、これはこれでコンパクトにまとまっていい会だなぁと改めて刺激をいただきました。私の班の皆さんもそうだったのですが、やはり臨床医が一番調べたいのは「介入の効果」だなと再認識。理想としてはRCTでしょうが、費用面ほか高根の花、というか非現実的。じゃあどうしよう?というのが切実な問題です。RCT頑張っても選択バイアスは問題ですし。個人的には前向きコホートしかないんじゃないかな?と思っています。ので、今回はお手本として「介入の効果をみる前向きコホート」を読んでみます。JAMA様なら間違いないでしょう!

Surgical vs nonoperative treatment for lumbar disk herniation: the Spine Patient Outcomes Research Trial (SPORT) observational cohort


研究疑問 :腰椎椎間板ヘルニア(LDH)に手術は有効か?
研究デザイン :前向きコホート
セッティング :Spine Patient Outcomes Research Trial(SPORT)
*RCTとRCT拒否者で構成された前向きコホートで構成
*米11州13施設

P LDHによる根症状(6W以上)がある患者
I 手術
C 保存(指導、PT、NSAIDsなど)
O 主要:SF-36(BP/PF)、ODI(3M, 6M, 1Y, 2Y)
  副次:治療成功感、就業、満足感、坐骨神経痛

SPORT(RCT)におけるITT解析では手術と保存に差が出なかった。でもRCTは一般化に問題があるし、介入が定期手術なのでクロスオーバー(手術群⇄保存群)がITT解析の結果を歪める。ので、SPORTでは前向きコホート研究もするんですよ!という研究。

【方法】
・細かな研究計画はプロトコル論文参照
・看護師が適格者を抽出し、RCTか観察研究への参加を提案
 - 観察研究を選んだ患者は医師を受診
 - 手術かそのまま保存かを自己選択
・手術はopen diskectomy
・坐骨神経痛の程度はSciatica Bothersomeness Indexで測定
・アウトカムはベースラインからの変化と改善者の割合として比較
 - 保存群は割付時をベースライン、手術群は手術直前をベースライン?
 - 測定日がズレた場合は、線形補完した平均値を使用
・解析モデルには欠測とアウトカムに関連する変数を投入
 - 複数測定の影響に変量効果モデルを使用

【結果と結論】 
・潜在適格者1991人中1244人がSPORTに参加
 - 743人が前向きコホートに参加(手術希望521人/保存希望222人)
・参加者の97%が1回は測定でき、解析に組み入れ
 ‐ 各測定時点での測定割合は82‐89%
・手術⇄保存のクロスオーバーで結局手術528人/保存191人
・保存治療の内訳以下
 - 指導92%、NSAIDs58%、麻薬系35%、PT43%、ブロック38%
・手術合併症は以下
 - 輸血2人、硬膜損傷2%、再手術1年7%2年9%(半分が再発で)
・主な効果は以下(手術 vs 保存)
 BP変化量 (3M) 40.9 vs 26.0 差14.8 (10.8, 18.9)
 PF変化量 (3M) 40.7 vs 25.3 差15.4 (11.6, 19.2)
 ODI変化量(3M) -36.1 vs -20.9 差 -15.2 (-18.5, -11.8)
 BP変化量 (2Y) 42.6 vs 32.4 差10.2 (5.9, 14.5)
 PF変化量 (2Y) 43.9 vs 31.9 差12.0 (7.9, 16.1)
 ODI変化量(2Y) -37.6 vs -24.2 差 -13.4 (-17.0, -9.7)

このように、手術群の方が改善がよかった!が、自己申告のアウトカムなので解釈は慎重に行うべきであるとの結論。

<向学のためにlimitationのまとめ>
・適格基準が厳しいので、結局一般化に支障
 - 6W我慢できなかった人が含まれていない
 - でもガイドラインでは6W待つわけだから影響は小さいでしょ
・保存的加療は多様すぎる
 - 一部無効だったり有害だった場合に手術の効果を誇張
 - でもだいたいどの治療も効果あるとされている
・欠測が14~18%あった
 - でも複数の感度解析で結果が覆らないことが示された
・盲検化されていないうえに、アウトカムが自己申告
 - 後療法への意欲、期待、変化への気づきなどが結果を修飾
・すべての患者や術者の要因を考慮することは不可能
 - 未測定交絡がどの程度結果に影響しているかは不明

【批判的吟味】★★★★★
どこかでSPORTの枝研究読んで、もう一つだな…と思っていたのですが、本家はすごかったです。もう15年前にこんなに丁寧な研究がされていたんですね、そりゃJAMAに載るのも納得。RCTと対じゃなく、この研究1本だけなら無理だったでしょうけど。思いつくLimitationは全部書かれていたし、突っ込み思いつきません。お手本にするには交絡や欠測の取り扱いの詳細がなかったのが物足りなかったのは残念ですが、プロトコル論文には書いてるのかな。てかプロトコル論文がSpineに載るってすごい…

【コメント】
PubMedでSPORTをひくと100以上の文献が…これだけ大きな研究に関われたら臨床家/研究者として一生の仕事になりますね。それにしても「非盲検化」「アウトカム自己申告」は相当手ごわい問題…結局1/3が研究参加自体を拒否しているので、選択バイアスも結構ありそうだし。でもこれ以上どうしたらいいんでしょうか…バイアスも含めて治療効果!患者良くなってたらそれでいいじゃん!という考えもあるでしょう。でももし結果がバイアスからきてるなら、手術してなくても良くなってたじゃん!ということになるんですよね。手術の純粋な効果をみるのはホントに難しい…(てかシャム手術しないと無理?)