先日介入の効果をみる前向きコホート研究(非RCT)を読みましたが、引き続きお手本となるコホート研究を読んでみます。ある特徴が将来のアウトカムと関連するか?という予後をみる研究については、前向きコホート研究が最強になります。まぜなら「ある特徴」は介入と違ってランダム割付することができず、RCTが不可能だからです。それこそ研究デザイン力が結果の精度に大きく影響する臨床疑問になります。やぱりお手本なんで、JAMA様から…

Long-term risk of incident vertebral fractures


研究疑問 :低骨密度(BMD)は将来の骨折と関連するか?
研究デザイン :前向きコホート
セッティング :Study of Osteoporotic Fractures(SOF)
*1986年に開始、米4施設で構成

P 高齢白人女性(平均年齢69歳)
E   既存骨折あり
C 既存骨折なし
O 新規骨折

P 高齢白人女性(平均年齢69歳)
E   低BMD(単位は1SD)
C BMD正常
O 新規骨折

以前に低BMDと椎体骨折の関連、および既存椎体骨折と続発椎体骨折との関連について報告したが、平均3.7年のfollowと短かった。ので、15年以上観察した報告をまとめてみますとの研究。

【方法】
・細かな研究計画は先行研究参照
 - 黒人女性はリスクが低いので含んでいない
・研究参加9704人
 - 第8回調査対象は4284人(44%)
 - 実際に受診したのは2797人(29%)
 - うちX線が撮れて、読めて、ベースラインX線もある2680人(28%)を解析
・X線ではT4-L4の前方・中央・後方椎体高を測定
 - まず盲検化された3人でスクリーニング
 - 各X線で一番変形が強そうな椎体を、正常/微妙/たぶん骨折に評価
 - たぶん骨折だけ細かく測定
 - ランダムサンプル503人で試し測定
 -感度は「既存骨折」「新規骨折」それぞれ97%, 100%
・「既往骨折」の判定には前方/後方、中央/後方、後方/尾側椎体の後方を使用
 - いずれかが3SD未満の場合に「既存骨折」
・「新規骨折」の判定には前方、中央、後方を使用
 - いずれかが20%もしくは4mm減高で「新規骨折」
・BMDは踵骨、橈骨、大腿骨、大腿骨頸部、腰椎で測定

<解析>
・まず本研究対象2680人と非対称7024の背景を比較
・骨折時期はわからないので(Coxではなく)ロジスティック回帰
 - まず年齢と施設で調整
 - 続いてさらに骨粗鬆症加療、非脊椎骨折既往、BMI、喫煙習慣で調整
・ 年齢/施設モデルでROC解析(各BMD部位で)
 - さらに70歳以上/既存骨折で層化した解析も
・BMDと既存骨折で絶対リスクを算出

【主な結果と結論】 
・487(18.2%)に新規椎体骨折が発生
 - 既存骨折ありは163/394(41.4%)、なしは324/2286(14.2%)
 - 既存骨折のオッズ比は4.21 (3.33, 5.34)
・低BMD(1SD単位)も新規骨折の発生と関連
 - (大腿骨で)オッズ比 1.78 (1.58, 2.00)
・大腿骨BMD‐2.5SD未満+既存骨折ありの新規骨折発生は56%
 - 一方BMD正常で既存骨折は9%

既存骨折ありと低BMDはいずれも独立した新規骨折のリスク因子であり、既存骨折があり更に低BMDなら注意!との結論。

<Strength / limitationのまとめ>
・地域住民を対象とし、サンプルサイズが多く、15年目のX線を用いている。
・高齢白人女性以外(他の人種や男性)に結果が当てはまるかは不明
・生存者の多くが再診したが、再診しなかった人よりベースラインが健康だった
 - ので、骨折リスクを過小評価している
・腰椎と大腿骨のBMDはベースラインの2年後に測定
 - でもベースラインで測定した踵骨や橈骨とかわらない結果

【批判的吟味】★★★★★
アメリカやっぱ規模がすごいです。この研究幾らかかってるんだろ…ここまでやれば観察研究でもJAMAに載るんですね。解析は(私でもわかるような)シンプルなものですが、当時は旧き良き時代だったから?ツッコむところがあるとすれば、観察研究なんで交絡の調整は十分か?というところ。パーキンソン病、ステロイドはじめとした二次性骨粗鬆症…骨折と関連する疾患は相当たくさんあります。ただ、だからといってこの研究の結果が覆るとは思えませんし、結果に異論を唱える人はいないでしょう。ちなみにこれを「高齢日本人」で調べるのも重要かも(日本人だけ対象でJAMAに載るかはわかりませんが…)。

【コメント】
PubMedでSOFをひくと約30の文献が…やっぱり大きなコホート研究は枝論文が結構でますね。かく言う私も福島医大/京大のコホート研究の脛をかじりまくらせていただいています。「予後をみる研究」はRCTできない分、コホート研究頑張れば最善のエビデンスが出せますので、それこそ脊椎絡みの多目的コホート研究、多施設でできないかなぁ…「介入の効果をみる研究」のための疾患特異的レジストリも必要ですけど。