何とか娘の受験も無事おわり、私のインフルエンザAの完治したので論文checkします。何となくネタ切れ気味の雰囲気を感じつつ、今回はよくみかける「術後予後不良因子の探索」の研究(SpineJ, 2021IF4.2)をみてみます。どのように着地するのか興味。

Predictors for failure after surgery for lumbar spinal stenosis: a prospective observational study

研究疑問  :LSS術後予後不良因子は?
研究デザイン:データベース研究
セッティング:NORspine
*患者レベルで70%の悉皆性
2007~2017の期間 

P LSS手術を受けた患者
E 各リスク因子あり
C 各リスク因子なし
O1 治療失敗(12ヶ月ODI>31)
O2
悪化(12ヶ月ODI>39)

LSS手術後に改善しなかったり悪化しない患者がいる。全体の治療成績を向上するためには患者選択が重要なので、予後不良の予測因子を探索しました!という研究。

【方法の主なところ】
・ロジスティック回帰を使用
・停止基準p=0.01でBackword Stepwise
・治療失敗をODI差<8、悪化を<4とした感度解析も
・予測因子候補は以下(*はカテゴライズ)
 - 年齢*、性、喫煙、ASA*、BMI*、教育歴*、
   居住、ノルウェー人、障害給付、脊椎手術歴、
   MRI所見、術前ODI、罹患期間、多椎間
 ‐ 相関、線形性、交互作用を確認
・欠測は補完せず完全例を解析

【結果と結論】
・8919/11873人(75%)を対象
 - 1494人(13%)は固定併用
・治療失敗2950人(33%)悪化1921人(22%)
・治療失敗の予測因子は
 罹患期間>12ヶ月 OR 2.24 (1.93, 2.60)
 脊椎手術歴 OR 2.21 (1.94, 2.52)
 年齢>70歳 OR 1.97 (1.69, 2.30)
 各社会経済因子 OR 1.36から1.62
・悪化の予測因子も同じような感じ

で罹患期間>12ヶ月、脊椎手術歴、年齢>70歳が予後不良因子、との結論

【考察のロジック】
・結果のサマリー
・治療成績を既報と比較
・ひたすら先行研究引用しながら結果の説明
・今後の展望
 - 既存の2つの予測モデルがある
 - NORspineで作っても面白い
・Limitation
 - 交絡因子の測定が不十分
 - なので因果推論はできない
 - 約1/4が脱落

【批判的吟味】★★★
やりたいことは臨床的にとても共感できるのですが、やっていることのSo What?感は否めません。あまりディスると自分にブーメランなので偉そうなことは言えませんが、まず「手術患者だけを対象」にした研究結果をもとに「患者選択」はできません。研究の意義が「予測モデル作ってみても面白い」だけでは…予測モデルができても面白いと思う人多分少ないでしょう。術前ODIが1点あたりのOR 1.06 (1.06, 1.07)で、どうみても一番効いているのに殆ど触れられず。最高でもOR2くらいでは単因子での予測には全く使えません。完全例解析なのにザーッと見たところ欠測について書いてないし、全体的に構成も粗い。予測研究なのにLimitationに因果推論できないって書くのも…シンプルでわかりやすい研究ですが、折角のデータが〇いています涙。

【コメント】
貴重なdataであることは間違いないですが、悉皆性が高いデータベースで結構なサンプルサイズ、というだけで無双な感じがちょっと寂しいです。Spine JはIFだけみたら脊椎領域のトップ誌なんですが…雑誌の格的にはSpineとかJNSーSpineのが上なんでしょうか。NASS入ってないと査読にお金とられるし、その割にいい査読してもらえないし、投稿先としての優先順位下がってきました。