昨日仕事に行くと医局の机にMedical Tribuneの記事が。普段はなかなか読む暇がないですが、目をひく論文が紹介されていたので見てみます。最近BMJ(2021IF93.3)に載った「慢性疼痛に対する抗うつ薬」に関するUmbrella Review?いま2件Systematic Reviewに2件取り組んでいますので、勉強がてら…

Efficacy, safety, and tolerability of antidepressants for pain in adults: overview of systematic reviews

研究目的  :慢性疼痛に抗うつ薬は効果あるか
研究デザイン:Umbrella Review?
セッティング:全世界
*2022.2.16までの全ての文献を対象

P 様々な慢性疼痛患者
I 各抗うつ薬
C プラセボ
O 主要:疼痛
  副次:安全性、忍容性

慢性疼痛にNSAIDsはいくらか効くかもしれないが、有害事象の問題で長期使用はできない。そこで抗うつ薬の使用は検討され、様々なSRが出ている。のでSRのover viewを行いましたという論文。

【方法の主なところ】
・2人の著者が独立してSRとMeta Analysisを検索
・英訳されていれば、言語を問わない
・NMAは抗うつ薬vsプラセボが含まれれば採用
・複数のSRがあれば最も規模の大きいものを採用
 - Cochrane Reviewがあれば優先
・連続値アウトカムは100点満点に変換
 - 二値アウトカムはリスク比に変換
 - 頭痛に関しては頻度
・アウトカムは治療終了時点のデータを使用
 - 複数時点ある場合は最も多い時点を採用
・各比較をGRADE分類
 - さらに有効、無効、結論なしに振り分け
・安全性と忍容性はリスク比の推定範囲に0.75と1.25が含まれる場合に妥当と判断した
・SRの質はAMSTAR-2で評価
・バイアス評価ないSRは著者らが評価
 - 企業が関連したかどうかは厳重にcheck

【主な結果と結論】
・26SR(156RCT、>25000人)を組み入れ
・8剤の22疼痛(42比較)に対する効果が検証
・有効(高エビデンス)の比較は0
・有効(中エビデンス)の比較は4
 腰痛にSNRI -5.3 (-7.3, -3.3)
 術後痛にSNRI -7.3 (-12.9, -1.7)
 神経障害性疼痛にSNRI -6.8 (-8.7, -4.8)
 線維筋痛症にSNRI RR1.4 (1.3, 1.6)
・有効(低エビデンス)の比較は7
 - SNRI3比較(膝OAなど)
 - うつ患者の疼痛にSSRI
 - TCA3比較(緊張型頭痛など)
・無効が5比較、結論なしが26比較

*SNRI:セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(サインバルタなど)
*SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬(パキシル、ジェイゾロフトなど)
*TCA:三環系抗うつ薬(トリプタノールなど)

となり、有効性が示唆された比較は低エビデンスも含めても11/42しかないので、慢性疼痛に何でも抗うつ薬!は考えもの、との結論。

【批判的吟味】★★★★★
SRかと思ったら(たぶん)URだったのであまり参考にはなりませんでしたが、BMJに載ってるので方法論はばっちりなのでしょう。いつかすることがあれば参考にしよう。連続値は100点満点に変換したのはなるほどな~と思いました。

【コメント】
脊椎外科や、成り行きで肩や膝の変性疾患の外来をしていると結構お世話になるのがサインバルタかと思います。研究を通じたメッセージとしては「何でも慢性疼痛に抗うつ薬使うなや!」かと解釈しましたが、サインバルタ効かなかったらどうしよう…と思ったら我々がだいたい扱う慢性疼痛にサインバルタ使うのは許してもらえそうです。よかった…