二択で迷ったらアグレッシブな方を選べ

本ブログのコンセプトは 「外科系臨床医に臨床研究について知ってもらう」です。自分で勉強したことを備忘録として気ままに書いていますので、情報の真偽については責任を負いかねます。また専門性が高い方にとっては内容が浅い点、分量が多くて読み辛い点もご了承くださいませ。

カテゴリ:臨床研究 > 論文の書き方

臨床を離れて臨床研究を学んで2年、臨床に復帰して研究との両立に四苦八苦しながらもう2年。もう40を過ぎて久しいですし、そろそろ実績も出していかないと前に進めません。これまでにようやく論文6号が完成しつつあり、7号に着手しています。研究者冥利に尽きますが、解析まで終わってあとは書くだけの研究が4件、データがあって次解析の研究が3件、データ到着待ちの研究が1件あります(自分がメインじゃないものは除いて)。現在5号まで投稿し、それぞれ経過は

 1号 JBJS→OAC→CORR→Spine J→Spineにaccept
 2号 Spine→ESJで査読中
 3号 BJJ→Spine J→Spine→JNS-Spine→ESJで査読中
 4号 ESJ→GSJで査読中
 5号 BJJで査読中

で、1勝10敗4分といったとこでしょうか?3本目では通したい、とよく聞くので大分苦戦…いろいろ論文読んできましたが、方法論がめちゃくちゃな論文が全然Publishされています。ので、方法論ちゃんとすれば常勝だ!と思っていた自分が楽観的すぎました涙。ネタがズレてるのか、論文構成が甘いのか…トンデモ査読を恨む前に、まず自分にベクトル向けないと…と思う今日この頃です。

さて、成績はさておきそれなりに論文書いて、論文執筆はパズルだなと感じるようになりました。デザインしっかりやったら、あとはパーツをいくつか作って組み合わせるだけというか、創作というより単純作業というか…まだ大分しんどいですけど。某高名な臨床研究家が「論文5本自分で書いたらちょっと世界がかわる」とおっしゃっていたのはこの感覚なんでしょうか(結果が伴っていないので、大分改善しないといけない点はあるだろうことはさておき)。具体的な流れとしては

①元のデザインに忠実に、Methodsのパーツを作る
Study Population
Data collection
Definition of Exposures
Definition of Outcomes
Statistical analysis
②パーツを組み合わせてMethodsを完成
③Statistical analysisに1:1対応したResultsを作る
④Introの各パーツを作る
Epidemiological information
Background
What we know
What we don't know
Aim
⑤Discussionの基本パーツ作る
Brief summary
Implication
Strength and Limitation
⑥Discussionの追加パーツ作る *論文によって取捨選択
Explanation of results
Comparison with previous studies
Possible mechanisms
⑦⑤⑥のパーツを並べてDiscussionを完成
⑧Conclusionを作る
⑨①~⑧から抜粋してAbstractを作る
⑩Titleを作る

といった感じです。臨床しながらだとどうしても夜とか日曜祭日の時間使わないとできませんが、頑張れば①~➂で1週、④~⑦で2~3週、⑧~⑩は1日でできるので、1ヶ月くらいで原稿が完成する感じ?あとは共著先生に回覧したり、大学院絡みであればメンター先生方にアドバイス頂いたり、その後英語校正かけて投稿準備したりで、投稿までには早くてもう2週間くらいはかかりますが。

この計算だと今進行中の研究が終わるのは頑張って来年末…10本書いたら次の世界が見えて更にスピードが上がることに期待しつつ、先の見えない単純作業(苦行)を続けていきます。さ、気分転換に新居探しでもいってこよっと!夜は7号のお手本論文探しです。

Twitterで「論文が出版されるまでの流れ」を誰か発表してくれ!という呟きをみかけました。糞ブログですが、後輩たちも(きっと)みてくれているので、私の拙い経験(4年近く臨床研究勉強してやっと1本accept)をまとめてみようと思います。何本も書いている方からしたらしょーもない内容で恥ずかしいですが…

 ①研究デザインと倫理申請(3ヶ月)
 ②データ収集と解析、日本語レポート作成(6ヶ月)
 ③英語論文化(3ヶ月)
 ④投稿~Revision(なんと14ヶ月)
 ⑤Accept(2ヶ月)

①研究デザイン(3ヶ月)
まず使用するデータベース(DB)が決まりました。そのDBを使って検証できそうな研究疑問(RQ)をたて、既存のエビデンスを調べて、厳しそうならまた新しいRQをたて…という妄想を繰り返し、これだ!というRQを決めます。そしてアウトラインを作って、メンター先生に相談しながら変数の定義や解析法を煮詰めていきます。ある程度デザインが固まったら、教室全体のミーティングで信を問い、修正してデザインを完成させました。その後本来ならプロトコルを書いて、その他必要な資料(情報公開文書など)を準備して倫理申請になります。ただ本件はDB研究の一環としてすでに認可されていたため、申請不要でした(もし必要なら最低+3ヶ月)。

②データ収集と解析、日本語レポート作成(6ヶ月)
続いてDB利用申請手続きをし、認可されてデータセット(DS)をいただきました。自分で収集していないので相当ラクしましたが、DSに入った尺度の勉強など、DSを理解するのには結構苦労しました。あわせて変数作成用と解析用のスクリプト(こう解析してくれ!と解析ソフトに指示する指示書)を作りました。ここはド素人かつ数字アレルギーだったので一番苦労しましたが、成書、web上の情報やhelpなどから情報収集し、時に同期やメンター先生にヒントをもらい、修正しながらなんとか完成しました。解析結果は吹けば飛ぶような弱いものでしたが、仮説を支持する結果だったのは報われました。続いて結果を日本語レポートにまとめて提出し、学位審査発表用にスライド作成を行いました。何回もメンター先生や教室全体で予演をしていただき、もういいやろ!というところまで準備して発表です。結果次席で卒業できたので、これも報われました。

③英語論文化(3ヶ月)
その後臨床復帰し、自分の臨床が冴えないことにショックを受けつつ英語論文化を進めました。日本語レポートあるし楽勝!と思ったところ、学位審査用の内容(defense重視)からは大幅な変更を要し、結構時間かかりました。英語はお恥ずかしながらある程度読めても全く書けないので、フレームが似たいい論文をたくさん読んで、使えそうなフレーズをはめ込んで、足りないところは翻訳ソフトも使いながらつないで…という作業をひたすら繰り返し、何とか読める形にしました。その後何度もメンター先生にみていただき修正して、ドラフトが完成しました。そこで共同研究者に回覧して更に修正し、英語校正に出して投稿原稿ができました。校正はフォーマット調整、letter作成や1年間の再校正無料がついたコースを使いました。当初tableやreferenceの校正は省いて費用浮かせようと思いましたが、「全部まとめてみてもらいなさい」というアドバイスがあり原稿全体を校正にかけました。

④投稿~Revision(なんと14ヶ月)
その後投稿に必要な書類を準備し電子的に投稿です。図らずも色々な雑誌への投稿を経験しましたが、雑誌毎に必要書類、スタイルや共著者の同意取得法などルールが大きく異なり、投稿する度に投稿規定を細読した準備が必要です。共著者の直筆サインを要する雑誌などは、投稿準備だけで1ヶ月かかりました。さらに査読も数ヶ月かかったり、結局「1年間の再校正無料」を使わないまま期限が切れ、追加料金を求められてはそれはおかしいだろ!と交渉したり苦労しました。14ヶ月でようやくmajor revisonにのった時は、メンター先生からおめでとうと言ってもらいました(revison≒acceptという感覚のようです)。

⑤Accept(2ヶ月)
査読者とのやりとりは以前記事にしましたが、10ちょっと質問がきてどれも想定内でした。さーっと言い訳したらもう大丈夫かな?という考えは浅はかで、「真面目に対応しなさい」とメンター先生方のご指摘あり。先輩からもらったひな型を参考に自分で回答作っては、ダメ出し、また直して…のやり取りを3回やってようやくOKいただきました。結果A4で9枚くらいになって本文より分量が多くなり、正直マジか…と。その後回答も英語校正にかけて再投稿です。で、minor revisionで返ってきて、返したら10日くらいでacceptの連絡をいただきました。そこから現在1ヶ月経過し、編集部からの連絡まちです。ここから先は悲しいかな未経験なので、またの機会に。

【まとめ】
結局研究開始から2年4ヶ月も!かかっています。データ収集も倫理申請もしていないのに…まぁ日本語レポート作成は不要でしょうから、差し引いたら2年くらいでしょうか?それでも相当な時間。ほかの研究(③までは完了)はどうなっているかといいますと

2号(個人) データ収集後3年塩漬け、計3年5ヶ月で1誌目(Spine)査読中
3号(大学院)1号の改良版、着想から11ヶ月で3誌目(Spine)投稿準備中
4号(大学院)1号の前に開始、地道にデータ集めて2年7ヶ月で1誌目(BJJ)投稿準備中
5号(個人) プロジェクトの一環、1年8ヶ月で1誌目(未定)投稿準備中

と、どれも大分寄り道はしているものの早くてもacceptまでは1年半くらいかかりそう。切り替えて次々新しいことやっていかないと、結果出るの先過ぎて気持ちが切れちゃいます…とりあえず現在②をやっている研究をひたすら続けます。あと半年くらいしたら何本か成仏できるのだろうか…

論文を仕上げたのはいいけど、共著者に誰を入れるか?で頭を悩ませることが多いと思います。なぜなら、実質ほぼ一人で行った研究にも、同僚や上司の名前を入れるいわゆるギフトオーサーシップが蔓延しているからです。実績(h-indexも著者順は関係なくカウント)、資格取得や維持が関係する非常にデリケートな問題で、載せないと恨まれたり、自分の立場が悪くなるんじゃないかという恐怖がある本当に面倒くさい問題。しかも、近年のちゃんとしましょう!という流れを受けてか著者数に制限を設ける雑誌が多く、かえってややこしい(例えばJBJSは原則6人、BJJは8人)。

最近お問合せをいただいたので、ちょっと整理しておきます。以前著者の役割という記事を書きましたが、どの程度の役割を果たせば共著者になるんでしょうか。実はちゃんと決まりを作って無駄なところにエネルギー使うのやめましょう!と1997年にCommittee on Publication Ethics: COPE という団体が英国で発足しています(とSPHの授業で習いました)。このサイトを進んでいくと、共著者を決めるガイドラインがfreeでダウンロードできます(2003年度版とちょっと旧いですが)。ざーっとまとめます。

<著者の資格>
・ 研究立案とデザイン、データ取得 acquisition、データ分析と解釈のいずれかに実質的貢献がある
・原稿作成や内容の大幅改定を行う
・最終稿の出版に同意する
・これら満たす者が著者
・ファンド獲得、データ収集 collection、研究グループの統括は著者資格とは別

<著者問題で頭を悩ませないために>
・研究開始から議題にあげ、記録する
・原稿を完成するまでに、誰がいつ何をするかの情報を共有記録する
 - 筋違いの期待やコミュニケーション不足から問題が生じるので

<揉めたらどうするか>
・「実質的な貢献」の判断は難しく揉めやすい
 - 上司に著者の出し入れを指示されたら、エビデンスを示して自分の考えを通す
 - それでも指示されたら、もっと上に泣きつく
 - でもほんとにそうする前に忠告する
・倫理的不正を持ちかけられた際には究極の決断
 - 黙って従う?キャリアを犠牲にして正義を通す?
 - どっちもきついので、別の方法をとりましょう
 - 雑誌に不正として指摘される可能性を伝える
 - そうなったらacceptされないけどいいんですか?

【コメント】
臨床研究を学び始めてから、日本語1編、レター1編、英語3編書きましたが書くことに必死で著者問題は棚上げしてました。メンター先生方とボス(ちゃんと研究立案段階からみていただいている)が入るのは暗黙の了解で決まっていて、あとは原稿完成してから貢献が高い方に共著に入っていただくことを改めてお願いして、原稿の改訂に加わっていただくと。基準は満たしていますので、このやり方で問題はないようです。でも揉めないためには研究立案段階からある程度決めて記録しておくべきでしょうか。てか更に上に泣きつくとか、過激すぎて日本ではちょっと無理でしょ…訳あってんのかな…

臨床での悩みも尽きず、現実逃避も兼ねて論文執筆指南本を読んでいます。そこで紹介された興味深い論文について。Scientometricsという雑誌(2018IF2.8)に2007年に掲載された「自己引用はどれくらいご利益があるか?」という論文。PubMedでは引っかからなかったのですが、Webから無料で全文読めました。方法論は抜きにして概略だけ…

Does self-citation pay?

【内容のまとめ】
・ノルウェーの文献DBの6万論文(70万引用)を解析
・1著者の執筆数は平均7本
 - 被引用回数は85回
 - うち自己引用は10回(12%)
・activeな著者ほど自己引用が多い(相関係数0.64)
・自己引用すれば被引用も増える傾向あり、1回の自己引用で
 - 翌年1.03 (0.64, 1.42) 回被引用増
 - 4年で2.83 (2.00, 3.68) 回被引用増 
 - 10年で3.65 (1.13, 6.19) 回被引用増

【コメント】
以下紹介する本では、自己引用の動機を以下のように紹介しています。
・議論を展開するうえで必要
・被引用数を増やしたい(h-indexあげるため)
・内容をよく知っているので引用が楽
・自分の専門と実績を示す
 - 読者がわざわざ調べる手間を省く
 - 似たような研究者とつながる

そして、「自分の研究を引用したからといって、恥ずかしがることはない」と自己引用を勧めています。大学院の「論文の書き方」の講義でも、講師先生が「自己引用することは真面目に研究していたら必然」といった旨話されていました。実利(被引用が4年で3件増える)もあることですし、今後実績増えたら是非自己引用してみようと思います。といいながら疫学勉強し始めて3年ちょっとで、まだ筆頭著者の論文通らずですが涙。臨床戻って1年3ヶ月で原著3本完成して、共著1本通って4本投稿中、来年にはきっと自己引用できるようになっているはず…

論文を書く際(というほど経験ないですが涙)の標準的な流れは、背景情報の要約(記述部分)、単変量解析、多変量解析…と方法の項に記していくことになると思います。その際に私は何も考えずにMultivariate analysisと書いていた気がします。が実はこれは間違いで、実際はMultivariable analysisだったと…先日大学院の研究ミーティングで後輩が教員先生に指摘された際に、私も初めて知りました。調べてみると、American Journal of Public Health(2018IF5.4)に以下のような記事が。

Multivariate or Multivariable Regression?

<Multivaliableモデル>
 左辺がアウトカム、右辺が多変数のモデル 
 =我々が交絡調整などでよく使うモデル
 ⇔ simpleモデル

<Multivariateモデル>
 同一個人での複数時点での測定データ
 各層に複数人を含む入れ子やクラスターのデータ
 をモデル化したもの

・2011年度のAJPHで「multivariate」モデルを使った文献は30本 
 - 正しく「multivariate」だったのはたった5本(17%) 
 - あとの25本は実際は「multivariable」だった
・方法の項では変数の数でsimple or multivaliableを使い分ける
・また、アウトカムの種類によってモデルを使い分ける
 - 連続値なら線形モデル
 - 2値ならロジスティックモデル
 - 複数測定ならmultivariateモデル
 - 時間変数なら部分ハザードモデル

【コメント】
すなわち、simple multivariate analysisとか、multivariable multivariate analysisと表記する?ことがあるということですね(何か気持ち悪いけど…)。全然知りませんでした…教員先生も、論文投稿した際に査読者に怒られて知ったそう。確かに日本語訳するとどちらも「多変量」になるので、ややこしいです。この辺は全く別の概念である割合(proportion)と率(rate)がごっちゃになっているのと同じような問題でしょうか。まぁそもそも脊椎外科領域ではmultivaliable modelを使った研究すらあまりみかけないので、multivariateだろうかmultivaliableだろうが些細な問題かもしれませんが涙…ガチのRCT以外で単変量解析する意味殆どないけど、査読者含めわかってやってる人どの程度居るんだろう…

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