二択で迷ったらアグレッシブな方を選べ

本ブログのコンセプトは 「外科系臨床医に臨床研究について知ってもらう」です。自分で勉強したことを備忘録として気ままに書いていますので、情報の真偽については責任を負いかねます。また専門性が高い方にとっては内容が浅い点、分量が多くて読み辛い点もご了承くださいませ。

カテゴリ:骨粗鬆症 > 椎体骨折(OVF)

さて、臨床研究ではいろいろな差を調べるわけですが、そのものさし(尺度)も様々です。腰痛による機能障害の尺度はRoland-Morris Disability Questionnaire(RDQ)が有名です。そして差があることがわかった際には、その差が重要かどうか?を判断する目安がその尺度ごとにあり、Minimal Clinical Important Difference(MCID)と称します。

いま椎体骨折についてのいくつかの前向き研究をデザインしていて、早ければ4月にも開始します。そこで椎体骨折患者にRDQを使った際のMCIDについて勉強。MCIDをどう決めるか?などは不勉強(だから内容がズレてたらホントすいません)ですが、ドンピシャ(ぽい)論文がSpine Jに!あったのでとりあえず読んでみます。何を勉強したらいいかの道標になることを期待。

Item response theory analysis to evaluate reliability and minimal clinically important change of the Roland-Morris Disability Questionnaire in patients with severe disability due to back pain from vertebral compression fractures

研究疑問  :重度腰痛患者におけるRDQの妥当性の検証
研究デザイン:過去起点コホート
セッティング:米・英・豪11施設の研究121人+米研究からの選抜93人
*椎体形成術が施行された対象
*ベースラインと、術後1Mの値を使用

Introduction
・RDQ(24項目)から5つ抜いて4つ加えたRDQ-23が開発された
・RDQは~中等度の腰痛を対象に開発され、重度に使えるか微妙
・とくに低値域と高値域で誤差が大きい
・ので、椎体骨折におけるRDQ-23の妥当性とMCIDを検証

Methods
<Item response theory (IRT)>
 - 特定集団に不変の項目や、被験者と項目のモデリングについての共通指標を示す?
 - 1パラメータロジスティックモデル(1PL)は項目の困難度(b)を示す(-2~2)
 - 2PLはbと弁別能(a)のモデル(aは項目と潜在特性 [θ] の関連を示す)
・Dimensionality
 - 項目と個人の分析に一次元IRTを使用
 - 一次元性の検討には因子分析を用いる
 - 因子分析における第1因子の優位性を
   the latent variable exploratory factor analyses with the principal axes method
   を用いて決定することで評価
 - 第1因子によって生じる分散(因子固有値:eigenvalue)と第2因子のそれの比率、
   第1因子による多様性?として示す
・Choice and overall fit of item response model
 - 1PLと2PLの選択には、RMSEA統計量を使用
・Person and item parameters
 - 理解不能
・Reliability of the RDQ-23 in light of test information
 - ある集団のθは平均0/SD1に変換される
 - 項目情報関数(IIF)は、その項目が提供する情報が最大となるθを示し、
   項目の有用性を示す強力なツールである
 - 重度腰痛集団における尺度の有用性は、古典的テスト理論(CTT)における…
   以下理解不能

<Classification of patients who achieved MCID>
 - 以下2つの手法で調査
・MCID derived from classical distribution-based methods
 - CTTに基づく
 - ベースライン値の0.5SDと1測定の標準誤差(SEM)を用いてMCIDを算出
 - 1.96SEM、smallest real difference (SRD)、modified reliable change index (RCIindiv)
   でも算出...
   ここから理解不能
・MCID based on IRT statistics
 - SEMによるMCID計算は「測定誤差がスケール全体で均一」という無理な仮定をおく
 - IRTはこの問題を回避するSE(^θ)という統計量を提供する...
   以下読むことを断念
 - 古典的手法と、IRTを用いた手法の一致度はκ係数で評価
   0.74以上は誤差小、0.40-0.74は許容範囲
・MCID based on published literature
 - 多くの先行研究でのMCIDは5

Resultsの抜粋(MCIDに関する部分)
・MCID derived from classical distribution-based methods
 - 0.5SD法および1SEM法 MCID=2
 - 1.96SEM法 MCID=4
 - SRD法 MCID=5
・MCID based on IRT statistic
 - 1SEM法と1SE(^θ) κ=0.93
 - 1.96SEM法と1.96SE(^θ) κ=0.89
 - SRD法と2.77SE(^θ) κ=0.71 
 *IRTを用いたMCIDは集団特性によって変化

Discussionの抜粋
・RDQ-23はより軽度の集団ほど鋭敏に測定する
・IRTを用いたMCIDは、重度になるほど大きくなる
・より重度の集団を標的としたRDQの改訂版があるとよい

Conclusions
・中等度の腰痛を検出する目的の項目を、重度の項目に置換したRDQがあるとよい
・RDQを用いて「意味ある変化」を解釈する際は、算出法の選択に要注意

【コメント】
大変恐縮ですが、手に負えませんでした...成書も参考に勉強しながら読んだのですが、真面目にIRT勉強しないと読めません。何となくわかったのは

 ・MCIDの求め方は2通り(分布から算出する方法と、外部尺度を用いる方法) 
 ・RDQは重度腰痛の測定尺度としては微妙かも 
 ・RDQのMCIDは使う対象によって異なるかも 
 ・だいたい5に設定したら間違いなさそう

といったところでしょうか。先日読んだRDQを主要アウトカムにしたBMJのRCTの研究対象集団では平均値が13点くらいだったので、今研究を企画している集団の平均値がそのくらいなら許してもらえるかなぁ...だいたいRCTとかに入っている椎体骨折集団のベースラインRDQは20弱くらいなのでちょっと微妙かも。でも予後良好例も入るので平均値もうちょっと低くなる?とりあえずパイロット調査してデザイン固めるのが良さそうですね。前向き研究、失敗が許されないので敷居が高い...てかSpine Jの読者(主に脊椎外科医)でこの論文細読できた人どのくらいいるんだろう...査読で回ってきたら吐くなぁ…

先刻記事1つ書いたのですが、よく考えたら論文1本も読んでなかった…ということで慌てて1論文。椎体形成術(VP)シリーズで行こうかなとcore clinical journalフィルターでPubMedを遡っていると、最近好きなCORRに興味深い症例報告が。2014年とやや古いですが、時間ないしコレで!

Pulmonary cement embolization after vertebroplasty requiring pulmonary wedge resection

研究疑問  :VP後の重大合併症の記述
研究デザイン:症例報告
セッティング:ワシントン大学

P VPを受けた29歳男性(T11) 
O 広範な両肺セメント塞栓

VP後の肺塞栓は2.1~26%くらいいると言われているけど、殆どは無症状。症候性の肺塞栓は術中起こり得るけど、術後しばらくして(数週間~数ヶ月)起こることも多い。血管内でのセメント摘出は有効な選択肢だが、開胸手術が必要になる。今回セメント塊による肺壊死で肺の部分切除をした例を経験してしまったので報告します!という論文。

症例 :29歳男性
既往 :記載なし
原疾患と手術 :T11椎体骨折(3年前の事故)
経過 術後8日目に右胸痛がみられた。血ガス所見はpO2 59/CO2 31で、CTでは椎体から分切静脈へのセメント漏出、右下葉外側に梗塞を伴う楔状のセメント塞栓がみられた。肺部分切除を行い、改めて詳細なCT評価を行うと微小なセメント塞栓がびまん性に両肺に分布していた(Freeだし、是非文献の3D-CTご覧を!)。改めて人工心肺補助下に胸骨正中切開でセメント摘出術を施行。術後3ヶ月間で数回呼吸不全が起こり、その後も肺機能は低下したまま治療を継続している。

考察 :セメント塞栓は弁のない椎体静脈ソウを介して発生する。セメントは速やかに硬化するが、稀に下大静脈、腎静脈、右心、脳、肺動脈系に到達する。大動脈や前脊髄動脈塞栓の報告もある。セメント肺塞栓は不整脈、低血圧、低酸素、乾性咳、進行性呼吸不全、胸痛などを起こし、6例の死亡報告がある。人工心肺を用いた手術の報告が9例(うち3例は肺動脈切除)、心破裂も数例報告がある。無症候性のセメント塞栓には抗凝固療法が行われる。下大静脈内のセメントが肺に飛ばないように血管内で摘出した方向もある。予防するためにはセメント注入前に胸腔内圧を高め、椎体内を造影するのはどうだろう。術前は患者に十分にリスクを説明するべきである。

【批判的吟味】★★★
感想は「29歳で発症3年の外傷性骨折に椎体骨折したらイカンやろ」です。バルーン使うわけでもなく、一瞬で固まるセメント使ったら血管にセメント注射するのと一緒では…やっぱり術前画像が(意図的に?)提示されていないので、反面教師にしようにも情報が足りないのが残念です。ちなみに症例報告のガイドラインであるCAREに照らし合わせた改善点としては

 ・Key wordの設定がない
 ・術前の骨折の情報がない
 ・研究の強みと弱みに関する考察がない
 ・臨床的アドバイスが弱い(その根拠も弱い)
 ・患者の同意に関する記載がない

といったところでしょうか。

【コメント】
すごく教育的で、背筋が伸びる論文でした。遅発性に起きるとか、恐怖です。でもやっぱり術前画像がないのは非常にモヤモヤします。てか術者アタマおかしいのか!?患者同年代だなぁ…可哀そうすぎる。

最新のエビデンスではちょっと手詰まり気味ですので、範囲を少し昔に広げて有名な論文を。過去の記事でも紹介したとおり、近年椎体形成術(VP)は逆風甚だしいです。そのVPを肯定した側のVAPOUR試験(Lancet2016)です。

Safety and efficacy of vertebroplasty for acute painful osteoporotic fractures (VAPOUR): a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled trial.

研究疑問  :VPは発症6W以内の椎体骨折(VF)に効果あるか?
研究デザイン:RCT
セッティング:オーストラリア4病院(放射線科)

P 60歳以上の新規椎体骨折患者(2個まで、発症≤6W、腰痛NRS≥7;120人)
I  VP 61人
C ブラセボ(穿刺してPMMA混ぜるところまで)59人
O 主要:NRS≤4達成(14D)
   副次:RDQ、QUALEFFO、EQ-5D、鎮痛剤、有害事象、入院期間など
画像:圧潰割合、新規骨折

【背景と目的】
NEJMの2RCTでは椎体形成術(VP)の効果は示されなかったが、短期効果は検証されていないし、PMMAの量が少なかったせいかもしれない。参加者の3/4が発症6W以降だった(発症早期が少なかった)ことも影響しているだろう。よって発症6W以内のVFを対象としたRCTをしました!という研究。

【方法の詳細】
・NEJMの先行RCT(INVEST)のプロトコルを改良(著者2人が参加)
・対象は加療目的の紹介、専門医受診、入院および救急受診患者
・非同意、オピオイド、後壁突出、感染、悪性腫瘍、神経症状を除外
・独立した2医師が6ヶ月毎の安全確認を実施
・年齢、圧潰度、外傷、ステロイド、治療施設で中央層別ランダム割付
・VPは研究に関係しない医師チームによって施行、そのチーム以外は盲検化
・麻酔は局所麻酔、PMMAはできるだけたくさん詰めるよう意識
・外来患者(全体の43%)は日帰りVP
・測定は0, 3D, 14D, 1M, 3M, 6M(X線画像は0, 6M)
・新規骨折は6M時点で椎体高が15%以上減小したものと定義
・14D時点で患者とアウトカム評価者に割付の予想とその理由を聴取
・質問項目を減らすためにプロトコル改訂後にSF-36などの収集を中止
・収集はNRS、RDQの順にし、割付け予想は最後にした
・データは収集修了後に盲検化した解析者が開封、中間解析は行わず
・サンプルサイズがI群65%(C群35%)で設計
・解析はITT集団、解析のメインは検定

【結果と結論】
結果は14D時点でのNRS≤4達成割合はI群 44% vs C群 21%で群間割合差は23 %pt (6, 39)と有意差がつき、VPは急性期VFの短期的除痛効果があるとの結論。その他の結果は以下のとおり。

・PMMA注入量は7.5ml [2.8]
・微小な血管漏出が21例(34%)
・追跡割合は14Dで93%、6Mで85%(X線は70%)
・圧潰割合はI群27% [12]、C群63% [17]
・続発骨折はI群3例、C群2例
・NRSの全ての時点、RDQの1M以降でI群に有意差
・効果は胸腰椎移行部でより顕著だった 
・入院期間はI群が5.5日短かった
・両群3人ずつ試験と関係なく死亡 
・C群の2例にVFに起因する神経症状発現

【考察の要旨】
・解析で複数測定を考慮していないが、全時点でI群が優れていたので不要
・I群2例の神経症状には要注目。続発骨折に差はみられなかった(既存研究と一致)。
・VPによる入院期間の短縮や、椎体高の維持が示唆された(既存研究と一致)。
・胸腰椎移行部でVPの効果が顕著だったには、メカニカルストレスのせいだろう。
・本研究は介入や盲検化において優れ、よりシンプルなVPの効果を検証している。
・多量のPMMAを注入したが、血管漏出は増えず。発症早期の注入しがよかった?
・SRが否定的な結果なのは、急性期VFが少なく、入院患者が入っていないから。
・14Dで8人が欠測したが、全員アウトカムなしにしても影響は小さかった。
・20人は電話調査だが、NRSは来院でも電話でも結果はそう変わらない。
・85%が1施設での施行になったので、一般化に多少の疑義がある。
・対象者154人のうち120人が参加した点は、選択バイアスを小さくしている。
・胸腰椎移行部の骨折に焦点をあてた研究が必要である。

【批判的吟味】★★★★★
方法論的には、研究者としての夢である雑誌に掲載された時点で、言うことはありません。冗長になってしまいましたが、備忘録のため細読して記述しておいたわけですし。RoB2

1. 割付けの隠蔽化 Low risk
2. 割付けの盲検化 Low risk
3. アウトカムの追跡 Low risk
4. 評価者の盲検化 Low risk
5. 選択的な報告 Some concerns

と、RCTとしての質は高いでいいでしょう。でも、VP反対派がアップデートしたCDSRでのバイアス評価では3.~5.が私の評価より1ランク低い(厳しい)です。え、、もっと厳しくしなきゃいけないの!?やっぱり一回CDSR完投しないとダメですね。非盲検化試験と一緒の表にしたり、ちょっと悪意を感じるのは気のせいか…

【コメント】
解析もシンプルだし、デザインしっかりしてたら検定だけでもLancetに載るんですね(3年前は~今は難しそうだけど…)。血管漏出21例とか全然少なくない気がしますけど。このへんやっぱりKPの方がいいのか?死亡3人とかもあり得ない気がします。まー痛くて入院したVF患者にKPしたらときの切れ味は臨床的にも明らかなので、結果には納得。ただこの短期の除痛効果がどう予後に関連するかを検証しないと、「どうせ放っといても半年したら一緒だろ」という意見に反論はできません。この2年後にVERTOSⅣがくるんですね~整理しよう。

EAの通知論文が少したまりましたので頑張って読みます。今回は骨粗鬆性椎体骨折(いわゆる圧迫骨折:OVCF)後の二次骨折に焦点をあて、投薬による予防効果をみた韓国からのレビュー論文(星5つ)。骨粗鬆症治療関連のレビューは当然やりつくされていると思いきや、対象絞ればネタはまだあるんだなぁ~とまずリスペクト。BMC Musculoskeletal Disorders(最新IFが2)なのは気になりますが…

Effect of medications on prevention of secondary osteoporotic vertebral compression fracture, non-vertebral fracture, and discontinuation due to adverse events: a meta-analysis of randomized controlled trials.

臨床疑問  :各骨粗鬆症治療薬のOVCF後二次骨折の予防効果は?
研究デザイン:Systematic Review
セッティング:全世界

P 1つ以上のOVCFを受傷した患者
I 各治療薬
C プラセボもしくは他の治療薬
O 主要:最終受診時の椎体骨折割合
  副次:胃腸症状、副作用による治療中断、椎体以外の骨折
*RCTのみを包含

OVCF後の二次骨折予防については数多くの報告があるものの、要約した研究がないのでやってみました!という論文。

 ・質がModerateからHighの41RCTを包含
 ・プラセボを基準とした各薬剤の二次骨折の相対リスクは以下のとおり
   ゾレドロネート 0.34 (0.17, 0.69)
   アレンドロネート 0.54 (0.43, 0.68)
   エチドロネート 0.50 (0.29, 0.87)
   イバンドロネート 0.52 (0.38, 0.71)
   副甲状腺ホルモン 0.31 (0.23, 0.41)
   デノスマブ 0.41 (0.29, 0.57)
   ラロキシフェン 0.58 (0.44, 0.76)
   バゼドキシフェン 0.66 (0.53, 0.82)
 ・アレンドロネートを基準としたロモソズマブの相対リスクは 0.64 (0.49, 0.84)
 ・テリパラチドを基準としたリセドロネートの相対リスクは 1.98 (1.44, 2.70)

などがメタアナリシスで示され、これらの薬剤はみな二次骨折の予防に効果がありますよとの結論。

【批判的吟味】★★★
PubMedだけですが検索式も載せているし、包含したのもRCTのみで、質の評価も行っている。一見私ごときがケチつけるところはありません。ただ、失礼ですが薄っぺらい感じが否めない...機械的にRevManに数字入れ込んだだけというか...ここでふと京大の古川先生、小川先生が昨年Lancetに発表された「大うつ病に対する21種の抗うつ剤の比較」の研究を思い出しました。

Comparative efficacy and acceptability of 21 antidepressant drugs for the acute treatment of adults with major depressive disorder: a systematic review and network meta-analysis

臨床疑問の構造は似ていると思うのですが、何が違うのだろう。こちらはまずSupplementが300ページ近くある時点でもうすいません!という言葉しかでません(是非Fig 2.だけでもご覧ください)。ざっと気付く違いとしては

・プロトコル論文がない
・研究の細かな包含基準がない
・アウトカムの細かな定義がない(とくに測定タイミング)
・効果の指標が「relative risk」のみでやはり細かな説明がない
・用量の違いや、共介入(活性型VDやCa投与)をどう考慮したかの記載がない
・3群を比較した研究の取り扱いが怪しい?
・そもそもネットワークメタアナリシスするべきでは?

たぶん本当にガチでやれば、重ねて失礼ですがもっとインパクトのある雑誌に載っていると思います。お恥ずかしながらこれだめでしょ!と明確に指摘する実力が私にはないので、星3つ。てかホントに先行研究ないのかしら(すいませんがそこまでは今回調査しません)。

【コメント】
いま同僚のお誘いで腎不全患者の骨粗鬆症治療をやっています。きっと完投した暁にはもっとレベルアップしているはずなので、改めて見直しましょう。このくらいのレビューなら時間かければできそうだなぁ…でもそれじゃ甘い!ってことか…。

Evidence Alerts(EA)から逆風つよいBKPとチタン製インプラント(TIVAD)を比較する論文の通知がきました!Spine J掲載でEA星6つの多施設RCTです。

A prospective, international, randomized, noninferiority study comparing an implantable titanium vertebral augmentation device versus balloon kyphoplasty in the reduction of vertebral compression fractures (SAKOS study).

研究疑問  :TIVADはBKPに劣らないか?
研究デザイン:非劣性RCT
セッティング:欧州5ヶ国13病院

P 発症3ヶ月以内の骨粗鬆症性椎体骨折(50歳以上、T7-L4、圧潰15-40%)
I TIVAD
C BKP
O 主要:術後1YのVAS2以上改善、ODIの改善かつ合併症なしの複合
   副次:隣接椎体骨折、画像パラメータ、ODI変化、EQ-5D変化など
*ほか保存6W以上かつVAS≥5もしくは保存2W以上かつVAS≥7、かつODI≥30%

BKPやVPが椎体骨折患者の予後を改善することがわかっている。BKPと他の治療を比較した研究では差がなかったけど、検出力が不十分だった。TIVAD(たぶんこれ?)は整復力に優れることが基礎研究でわかっているので、BKPとTIVADを比べてみました!という研究。結果は主要アウトカム達成割合においてTIVAD群が優れ(79.7% vs 59.3%)、隣接椎体骨折も少なく(12.9% vs 27.3%)、12ヶ月での成績でTIVADはBKPに劣らなかったとの結論。

【批判的吟味】★★★
ランダム割付後に「手術適応じゃない」などと脱落(11人7%)したり、術後に「骨密度が低い」「高エネルギー外傷だった」と脱落したり謎が多いです。「手術した人にITT解析」とあるけど、それはFASですし。サンプルサイズ計算の根拠や非劣性マージンの根拠が不明瞭ですし(非劣性試験なのでここ重要)、主解析も多重補完データ(詳細は不明)でいいのか?主要アウトカムの根拠もよくわからないし、怪しい点が結構多いです。RoB2

1.割付けの隠蔽化 Low risk
2.割付けの盲検化 High risk
3.アウトカムの追跡 High risk
4.評価者の盲検化 High risk
5.選択的な報告 Low risk

と、RCTとしての質もちょっと厳しいです。治療者も患者も割付け結果を知っている状況で、主要アウトカムは自己申告(VASとODI)なのでバイアスリスクは残念ながら高い。現実的には厳しくても、この研究デザインなら患者は盲検化したかったです。

【コメント】
結果は非劣性どころか優れていたのに、結語で「非劣性が示された」と控えめな点、アウトカムが一番主張したかった「整復度」ではなく痛みとQOLにした点は好感がもてます。ただ現在BKPを含めた椎体形成術自体に疑義が生じています(もうセメントを詰めるのはやめよう)。本研究開始時にはなかった逆風なので、苦しいところでしょう(introductionでも敢えてやや古い論文のみ引用して、BKPそもそも論には全く触れず)。今後VPやBKPはダメかもしれんけど、TIVADなら効果あるぞ!という主張の拠り所になるのでしょうか。にしてはデザインが弱いけど…てかこれ星6には見えない力を感じる…あとSpine Jのeditor反BKPと聞いた気がしたけど、BKPネタ結構載せてくれるんだなぁ。

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