二択で迷ったらアグレッシブな方を選べ

本ブログのコンセプトは 「外科系臨床医に臨床研究について知ってもらう」です。自分で勉強したことを備忘録として気ままに書いていますので、情報の真偽については責任を負いかねます。また専門性が高い方にとっては内容が浅い点、分量が多くて読み辛い点もご了承くださいませ。

カテゴリ: 脊椎メタ

5月に始めてからひとり抄読会も65本目?になりました。記事にしていないものも含めると3日に1本くらいは読んでるのかな。1日1本読む!と決めてからは(ほぼ)毎日、自分でも一体どこに向かっているのかわからなくなってきました。まぁ、いい論文を読むのが一人前の臨床研究家になるための近道!と信じて、粛々と続けます。

今月上旬にSICOT-Omanに参加してきたのですが(あ、あとで記事にしよう)、なんと行きの機内で同僚が片桐スコアの片桐先生とお隣になり、最新の論文まで頂いた次第。高名な先生にお近づきになれるのは国際学会いく1つのメリットですね。予測モデルの研究2つ進行中ですので、勉強のために読んでみます。Cancer Medicine(2018年IF3.4)の2014年の報告。

New prognostic factors and scoring system for patients with skeletal metastasis.

臨床疑問  :脊椎メタ患者の予後は予測できるか?(生命予後予測モデルの構築)
研究デザイン:前向きコホート
セッティング:静岡がんセンター

P 症候性の脊椎メタ患者 808人
E 各リスク因子あり
C 各リスク因子なし
O 死亡(12M?)

脊椎メタ患者の生命予後予測は、最善の治療方針を決めるために重要である。2005年に片桐スコアを提唱したが、原発巣の治療成績もどんどん向上しているのでアップデートが必要。2005年以降前向きにデータ収集したので、検査データも踏まえ片桐スコアの改訂版を作りました!という研究。

方法のまとめ
・対象者は2005.1月~2008.1月の期間でリクルートし、2012.1月まで追跡
・脊椎メタ治療歴あり、他の病院での治療継続は除外
・打ち切りは脱落、研究期間終了、腫瘍と関係ない死亡
・手術や放射線治療を要した多発性骨髄腫も包含
・治療はbone metastasis boardの合議で決定
 - 脊椎メタ手術適応は脊柱不安定性+不全麻痺、限局、放射線抵抗性、期待余命≥6M
 - 四肢メタ手術適応は期待余命≥2M
・リスク因子候補は患者(5因子)、原発巣(4因子)、骨メタ(3因子)
・患者因子は性、年齢(≥65)、ECOG-PS(≥3)、神経症状(FrankelA-C)、血液data
 - 血液dataはCRP、LDH、Alb、補正Ca、plt、T-bil値で正常・異常・深刻に分類
・原発巣因子は原発巣の病勢、内臓/脳転移、原発巣治癒、化学療法歴
 - 原発巣の病勢は死亡dataから生存率を計算し、遅・中等度・速に分類
 - 遅は多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、甲状腺、前立腺(ホ依)、乳(ホ依)
 - 内臓/脳転移はなし・結節性転移・播種性転移に分類
・骨メタ因子は進展範囲、多発、病的骨折
 - 進展範囲は軸骨のみ・軸骨と四肢近位・四肢遠位に分類

解析法
・生存率をカプランマイヤー法で計算
・Cox比例ハザードモデルに12因子すべてを投入しハザード比を計算
・P値が有意になった?因子のみを用いて最終モデリング
・その先は...結果の項に記載!
・ハザード比の自然対数×2を四捨五入し各因子に配点→スコア完成
・各スコアの生存率を再計算
・結果をもとにPost hocにカットオフの数と値を決定?

結果のまとめ
・生存(打ち切り?)者の観察期間は平均53.9M (範囲1, 82)
・原発巣は肺 (26%)、乳 (17%)、大腸 (9%)、胃 (6%)、前立腺 (5%)、肝 (5%)
・原発巣不明は2%
・手術は59人 (7%)、緩和ケアのみ67人 (8%)、放射線治療は623人 (77.1%)
・手術の内訳は脊椎メタ12人、四肢メタ45人、骨盤メタ2人
・生存率は6M 0.57、12M 0.36、24M 0.23、36M 0.16

・最終的なスコアリングシステムは以下(10点満点)
 - 原発巣の病勢 (中等度2点、早3点)
 - 内臓/脳転移 (結節性1点、播種性2点)
 - 血液data (異常1点、深刻2点)
 - ECOG-PS (≥3で1点)
 - 化学療法歴 (あり1点)
 - 多発 (あり1点)

・スコアの解釈(12M期待生存割合)
 - 0-3 >80%
 - 4-6 30~80%
 - 7-10 ≤10%

【批判的吟味】★★★★
原発巣ごとの平均生存期間など、記述部分だけでも非常に価値が高い研究だと思います。ただ、いつの時点での生存予測がしたいのか、リスク因子候補選択方法、スコアリングシステムの作成方法などかMethodになかったのはちょっと残念です。カットオフ値2つなのでどういう形で見せるかは私もピンときませんが、完成したモデルの予測性能も欲しいところ。あとせっかく808人もdataがあるのでサンプルをスコア開発用と妥当性検証用にわけたり、Optimism-Corrected Perfomanceをみたり、本研究内で妥当性の検証もできたと思います。808人もいれば多少の欠測はありそうですが、欠測の有無やどう扱ったかの記載もないような。ちなみに予測モデル開発のガイドラインであるTRIPODに照らし合わせた結果も載せておきます。

 ・Abstractでも方法の記述が薄い
 ・セッティングの詳細がない(対象集団の特性が想像しにくい)
 ・サンプルサイズ設計の記載がない
 ・研究のlimitationはもう少しありそう(代表性など)
 ・プロトコルやデータへのアクセスの補足情報がない

【コメント】
勉強になりました!おそらく2009年以降のデータも収集されていることと思いますが、レジストリの構築、既存スコアの改訂はなかなかできない素晴らしいお仕事。脊椎メタ領域は日進月歩かつ重要な領域なので、先生方のご活躍に期待いたします。次はセッティングを変えた性能評価と妥当性検証、多分誰かやってるはずなので探してみます。いうか予測モデルの黄色本ガチで勉強したら、私のような雑魚でもこの分野に貢献できそう。勉強する時間作らなきゃ...

本日はEAからJAMAのRCTの通知がきました!直接脊椎外科領域ではないものの、脊椎メタの放射線治療に関する論文。質が高いのは間違いないし、方法論の勉強と放射線治療の知識の整理も兼ねて読んでみます。

Effect of Single-Fraction vs Multifraction Radiotherapy on Ambulatory Status Among Patients With Spinal Canal Compression From Metastatic Cancer: The SCORAD Randomized Clinical Trial.

研究疑問  :神経圧迫がある脊椎メタへの単回照射は複数回照射に劣らないか
研究デザイン:非劣性RCT
セッティング:英42施設、豪5施設

P 脊髄/馬尾圧迫がある18歳以上の脊椎メタ患者(期待余命≥8W)
I  8Gy × 1D
C 20Gy × 5D
O 主要:歩行可(4カテゴリの1か2;8W)
   副次:歩行可(他のエンドポイント)
   歩行喪失までの期間(カテゴリ1-2が3-4になるまで)
      歩行獲得までの期間(カテゴリ3-4が1-2になるまで)
      12,52Wの生存率
      有害事象、追加治療、QOL

【背景と目的】
脊椎メタには放射線治療が行われることが多く、複数回照射を長めの期間で行う方が予後がよいとされる。しかし脊髄圧迫がない例に対する単回照射の効果を示したRCTがでたり、(殆ど観察研究だが)システマティック・レビューでも単回照射が遜色ないことが報告され、各国のガイドラインでも複数回投与を勧めない潮流がある。そこで単回照射が複数回照射に起こらないことを検証する。

【方法の詳細】
・プロトコルと解析計画はSupplementで提示
・手術可能例、血液性腫瘍・グリオーマ、予防治療あり、脊椎放射線治療歴ありを除外
・施設、歩行能力、原疾患、骨外メタで層別中央ランダム割付
・エンドポイントは1,4,8,12,52W(それぞれ±7Dの幅をもたせる)
・カテゴリ2(MMT4程度で介助歩行可能)以上を「歩行可」と定義
・アウトカム達成割合を75%、非劣性マージンを-11%に設定
・非劣性マージンは先行研究を参考に研究員・ファンドで決定
・必要サイズは386人、1/3の死亡を見込み580に設定
・主解析はITT集団を対象に検定
・Post hocに以下の解析も施行(歩行能力、生存、膀胱直腸機能に関して)
 - Per-protcol集団を対象とした検定
 - ランダム割付に用いた変数を投入したロジスティック回帰
 - 交互作用の検定を含め歩行能力、原疾患、骨外メタによるサブグループ解析
 - カテゴリ1-2がカテゴリ3-4もしくは死亡になるまでの時間の比較
 - 8Wでの測定幅を-7D~+14Dに広げた解析
 - 欠測を全てアウトカムありとなしにした解析
 - 欠測に多重補完した解析(詳細は付録)
 - 施設を考慮した解析(理解できず...)
 - 死亡者を全てアウトカムありとなし、半分あり、生存者と同じ割合にした解析
 
【結果と結論】
包含可能性があった5552人のうち、694人がランダム割付された。うち、死亡255人などを除いたITT集団342人(49.8%)が主解析の対象になった。8Wの歩行可はI群69.3% vs C群72.7%でリスク差は-3.5% (片側95%CI: -11.5, ∞; 非劣性P値0.06)と有意な結果にはならず、非劣性は示されなかったとの結論。でも非劣性マージン超えたのちょっとだけし、他の結果(以下)をみても意味はあるのでは?とも述べています。

・1Wの歩行可リスク差は-0.4% (-6.9, ∞; 非劣性P値0.04)
・4Wの歩行可リスク差は-0.7% (-8.1, ∞; 非劣性P値0.01)
・12Wの歩行可リスク差は4.1% (-4.6, ∞; 非劣性P値0.002)
・12Wでの生存はI群50% vs C群55%で層別ハザード比1.02 (0.74, 1.41)
・他の11の副次アウトカムでも有意な結果は出ず

あと個人的に興味があったのは「歩行不可」のうちどの程度が「歩行可」になるのか?です。研究計画になく主張はできませんが、示されたdataからまとめると

 手術適応がなく、余命が8W は見込まれる神経圧迫がある脊椎メタの患者で
 割付時点で「歩行不可」だったのがI群117人とC群118人
 8Wまで観察できたのがI群34人(29.1 %)とC群44人(37.3%)
 うち「歩行可」に改善したのがI群12人(35.3%)とC群18人(40.9%)
 すなわち、12.8%が8Wで「歩行不可」→「歩行可」になっていた

手術できないからと諦めず、外照射は治療選択肢として提示すべきかもしれません。

【考察の構成】
・主たる結果のサマリー
・副次結果のサマリー
・先行研究との比較
・単回照射のメリット(安い、負担が少ない)
・その他研究の特徴(膀胱障害が多かった)
・Limitation
 - 歩行能力の一部は電話調査であり、報告バイアスの可能性
 - 死亡者が多く、解析はほぼ半数になってしまった
 - 乳Ca(若年が多い)が12%と少なかったので、選択バイアスの可能性
 - 膀胱直腸障害はあり/なしの2値なので、誤分類の可能性
 - 30Gy × 10回を行う地域もある

【批判的吟味】★★★★★
方法論的には、JAMAに載った時点で言うことはありません。脊椎メタで余命少ない患者に「医学の発展のために、あなたの残りの人生を研究に使わせてください」なんてとても言えませんが、そこを遂行した点にもrespectしかありません。RoB2

1. 割付けの隠蔽化 Low risk
2. 割付けの盲検化 Low risk
3. アウトカムの追跡 Low risk
4. 評価者の盲検化 Low risk
5. 選択的な報告 Low risk

と、RCTとしての質は高いでいいでしょう。ちょっと甘めの採点になっていることは否めませんが…コクランレビューが出たら答え合わせしましょう。強いて言えば包含可能性があった5552人のうち、除外基準に抵触したのが何人、研究参加を断ったのが何人、かまで示してくれるとより研究対象の代表性が想像しやすかったです。

【コメント】
やっぱりJAMAとかLancetは情報量が多すぎて読むのがタイヘン...私はBMJが好きです。しかも解析が難しく(明らかにプロの生物統計家の仕事)、理解するのが大変。ちょっとかじってても意味不明なところあるので、臨床家が全部理解するのは敷居が高すぎる気が。もうちょっとユーザーフレンドリーにならないと、エビデンスと実臨床が益々乖離してしまう...

東大の康永先生の教科書に「1日15分でもいいから論文を読む習慣をつけよう」とありますので、毎日は無理でも週2-3本は読んでみようと思います。正直キツイですが、「忙しいから論文を読む暇がない」は禁句です(汗)。今回はBJJ(旧JBJSBr:最新IF3.6 )7月号の興味深いネタを。

The impact of surgical timing on neurological outcomes and survival in patients with complete paralysis caused by spinal tumours: evaluation of surgery on patients with complete paralysis due to neoplastic epidural spinal cord compression.

研究疑問  :腫瘍による完全麻痺の術後予後良好因子の探索
研究デザイン:過去起点コホート
セッティング:中国の1病院整形外科

P 腫瘍による脊髄圧迫(完全麻痺)手術例(135人)
E 各リスク因子候補あり
C 各リスク因子候補なし
O 術後良好な回復(AISグレードD以上)
*リスク因子候補:年齢、性別、手術までの期間、麻痺のタイプ(痙性/弛緩)、再発、術前放射線療法、悪性、メタ、複数高位、胸椎
 
脊椎腫瘍の直接圧迫による不全麻痺は48時間の手術が良いことが報告されているが、完全麻痺についての報告はなく、完全麻痺でも意外と良くなることは知られていない(でも中国にはいっぱいいる!)ので報告します、という論文。

結果は38.5%はAISグレードA→D以上に回復し、年齢、手術までの期間と麻痺のタイプ(痙性のほうが回復がよい)の3因子が多変量解析でリスク因子として残り、予測モデルを作ったところC統計量は0.72だったと。ん?何だかロジックに違和感が(リスク因子の探索が目的のはずが、予測モデルの構築と性能評価に…)。続いて回復良好/不良でわけてカプランマイヤー曲線を描いたところ、回復良好群の死亡率が低かった、というあたり完全にロジックがブレています。そして完全麻痺でも1週間以内に手術すればチャンスあるし、長生きできそうだよ!という強気(飛躍しすぎ)な結論。

【批判的吟味】★★
ほんとに約4割が改善するなら、完全麻痺患者への福音となりますが、いささか胡散臭い。ロジックの一貫性の問題以上に、研究期間が約20年と長すぎる(治療法の変遷が考慮されていない)し、AISグレードは過去のカルテから拾っている(まず術者が恣意的に判定している)。手術しなかった患者の数と特徴や、リスク因子候補の選定根拠も不明です。そしてこれらが殆どlimitationに述べられていない。細かなところを指摘するとキリがありませんが、要するにバイアスが大きすぎて結果を鵜呑みにできません

【コメント】
ケースシリーズとして真摯に報告してくれたら、「完全麻痺でもチャンスあるかもしれない」と次のちゃんとした研究につながる貴重なデータになるのですが。某高名な先生も「専門誌は〇ミだ」という極論をおっしゃっていましたが、なかなかお手本になるような論文はないものです(毎日読むのはキツいなぁ…)。それっぽくメッキつけただけで、BJJは通るのか…全部ではないと思うけど甘い査読者なら?Core clinical journalだけどIF争いで質よりネタ重視に走ってる?

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