二択で迷ったらアグレッシブな方を選べ

本ブログのコンセプトは 「外科系臨床医に臨床研究について知ってもらう」です。自分で勉強したことを備忘録として気ままに書いていますので、情報の真偽については責任を負いかねます。また専門性が高い方にとっては内容が浅い点、分量が多くて読み辛い点もご了承くださいませ。

カテゴリ:手術あれこれ > 後療法

Evidence Alerts(EA)から腰椎固定術のリハに関する論文の通知がきました!キツいですけど、通知きたら必ず読みます(と背水の陣をしく)。Physical therapy(最新IF3.0)掲載でEA星4つ、スウェーデンのPTからの報告です。

A Person-Centered Prehabilitation Program Based on Cognitive-Behavioral Physical Therapy for Patients Scheduled for Lumbar Fusion Surgery: A Randomized Controlled Trial.

研究疑問  :認知行動リハは術後成績を改善するか?
研究デザイン:RCT
セッティング:スウェーデンの3病院

P 腰椎固定術患者118人(18⁻70歳、腰痛主訴)
I 認知行動リハ(術前1時間×4、術後30分×2)
C 術前運動指導(×1)
O 主要:術後6ヶ月のODI改善度
   副次:腰痛/下肢痛VAS、catastrophizing、kinesiophobia、EQ-5Dなど
*腰椎手術既往、悪性腫瘍、神経根症、側弯症などは除外
*参加者の背景情報はSwespine(国家規模の脊椎手術レジストリ)から取得
*サンプルサイズはODI8点差(MICD?)を検出するよう設計
*6ヶ月時点での欠測はI群9人(15%)、C群8人(14%)
*主解析はITT解析

腰痛に対する固定術は成績が悪いことが問題だが、術前リハで機能改善すれば多少いいのでは?といわれている。ただ機能だけではなく精神的要素(catastrophizing:どうせダメ思考、kinesiophobia:運動恐怖症)にも焦点を当てないとダメだろう!という仮説を検証した研究。結果、術前後のODI差はI群-14.5 (-19.8, -9.3)、C群-17.5 (-22.7, -12.4)と両群ともに有効な改善がみられ、調整した群間差は-0.16 (-0.55, 0.23)と殆どなく、認知行動リハの効果はわからなかったとの結論。

【批判的吟味】★★★★
全体的に丁寧に構成されていて読みやすい論文でした。ただ解析は複雑でよくわからず涙。施設差を変量効果として考慮するのはまだしも、RCTなのに交絡(うつ症状、性別、1日歩数)を調整してランダム化が崩れないんでしょうか。何か煙に巻かれているような…(簡単な解析になるようデザインして欲しい)。あと折角いいレジストリが利用できるので、背景情報だけではなく術後の鎮痛剤とか共介入についての情報もあればより質が高められた気が。RoB2

1.割付けの隠蔽化 Low risk
2.割付けの盲検化 High risk
3.アウトカムの追跡 High risk
4.評価者の盲検化 Low risk
5.選択的な報告 Some concerns

と、RCTとしての質はそう高くないです。ただプラセボやシャムができる介入じゃないし、止むを得ないでしょう。あとできることは追跡率を上げるくらい(欠測14%は寂しい)でしょうか。やっぱりプロトコルの内容がみれない?のは英語圏じゃないから仕方ないのかな。

【コメント】
リハ介入はまだRCTしやすい領域でしょうし、(相当)頑張れば必ず形になるということで、リハの先生方の奮起に期待します。あと「どうせダメ思考」とか「運動恐怖症」とか測定できちゃうんですね。心理尺度って興味深い(深入りする気はないです)。

腰椎術後のコルセットの効果をテーマにしたCochrane Database of Systematic Reviewsのプロトコル論文です。ブラジルの大学整形外科所属の先生から、2017年6月の発信です。Cochraneレビューは通常の雑誌とちょっと異なり、

 ①タイトル登録 ←該当する部門(全54)に投稿
 ②プロトコル論文投稿 ←部門の補助下に作成
 ③レビュー論文投稿 ←同じく
 ④アップデート論文投稿 ←同じく(推奨は2年)

の流れになり、審査があるのは①だけで(相当難関ですが)、本論文は②にあたります。IFはGroup毎に異なりますが、総じて6前後あってレビュー雑誌の最高峰に位置しています。

Postoperative braces for degenerative lumbar diseases

研究疑問  :腰椎術後の体幹装具は効果あるか?
研究デザイン:Systematic Review
セッティング:全世界

P 腰椎疾患術後患者(成人、骨粗鬆症・感染・バランス矯正手術・腸骨固定はのぞく)
I 体幹装具使用(種類は問わない)
C 指定なし
O 主要:ODI、Rolamd-Morris Questionnaire
      副次:SF-36、鎮痛剤の使用、合併症、仕事復帰
   *短期、中期、長期にわけて収集

用いるデータベースはCENTRAL、MEDLINE、Embase、Web of Science~ ここからは専門用語が多くなるので、この辺でやめときます汗。まとめると、どんな研究を含めるか、どんなデータを集めるか、含める研究の質の評価法、用いる効果の指標、欠測をどうするか、含める研究の多様性の評価法、報告バイアスの評価法・・・などなどがプロトコル段階で厳格に定義されているのです(だいたい定型文みたいですけど)。

何で(結果のない)この論文読んだかというと、何が重要なアウトカムか?を考える参考になるからです。脊椎外科医としては画像パラメーターに興味がいくのですが、医学界全体からするとPatient Reported Outcomeがやっぱり重要なんですね。表現は悪いですが、専門馬鹿(だけ)にならないようにしないと。2年経ってまだ③が出ていないのは、質が基準を満たす論文みつからなかったのでしょうか?ちなみに外傷術後のコルセットの効果をみるRCTが去年始まっていたりします。コルセット関連のネタは割とHOTなようではあります。

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