忙しさにかまけてなかなかEAをチェックできていなかったので、臨床の隙間時間を利用してみてみると…100文献以上たまっていました涙。殆どが私には直接関係ない整形絡みの論文ですが、なかに相当重要な論文を発見!「頚髄症手術は前から後ろからどっちの方がよい?」という、古来より結論が出ていない臨床疑問に対し、なんとJAMAにRCTが…これは読んでおかないと完全なモグリです。いったいどこの国から?とみてみるとやっぱりアメリカの多施設。さすが…
Effect of Ventral vs Dorsal Spinal Surgery on Patient-Reported Physical Functioning in Patients With Cervical Spondylotic Myelopathy: A Randomized Clinical Trial
研究疑問 :頚髄症(CSM)では前方>後方か?
研究デザイン :RCT
セッティング :北米15施設
*2014.4.1~2018.3.30
P 多椎間CSM(45~80歳)
I 前方除圧固定 63人
C 後方除圧もしくは除圧固定 100人
O 主要:SF-36(PCS, 1Y)
副次:JOA, 合併症, 就業, SVA, Health resourceの使用?, NDI, EQ-5Dなど
CSMの手術は年々増えていて(2009年にnational health優先課題100に選抜)、米国では術後の頚部痛の少なさから前方除圧固定が良いとされる。でも結局前後どちらがよいかはっきりわかっていないので、調べてみました!という研究。
【方法】
・プロトコルと解析計画書を付録で添付
・CMSの定義は以下
①症状所見で以下2つ以上
- 手の痺れ、歩行障害、深部腱反射亢進、バビンスキー陽性、膀胱障害、クローヌス
②2椎間以上の病変
・除外基準は以下
- C2-7の後弯が5°以上
- 前方骨棘が3椎間以上
- 大きな骨棘やOPLL
- 過去の頚椎手術既往
- ASA4以上
・15人の専門家パネルが臨床的にequipoiseか(RCTして問題ないか)判定
- 12人以上の合意
・5or10の置換ブロックで2:3に割付
・後方除圧の場合固定追加するかは術者の判断
・ランダム割付拒否/ランダム割付が不適格な患者もコホートとして追跡
・PCSは偏差値に変換
- MCIDは5を採用
- α0.05、パワー90%、脱落15%で必要サンプルサイズは159人
・中間解析は行わず、モニタリング委員が合併症を観察
・主解析(PCS)は線形混合モデル
- 術者を変量効果、ベースラインPCS、介入、時点、介入×時点で構成
・他の解析も同様のモデル
- 2値アウトカムはカイ二乗検定
【結果と結論】
・潜在適格者458人中269人が参加、163人がランダム割付
・1年追跡は前方60/63人、後方95/100人で合計95%
- 2年追跡は80%
・1年時のPCS改善は
前方5.9 vs 後方6.2 で差0.3 (-2.6, 3.1)
・副次アウトカムの殆ど差なし、差があったのは以下(前方 vs 後方)
- 合併症割合 48% vs 24%で差24% (8.7, 38.5)
- 嚥下障害 41% vs 0%
- 神経症状悪化 2% vs 9%
- 再手術 6% vs 4%
- 1ヶ月再入院 0% vs 7%
このように、別に前方が優れているという結果がでなかったとの結論。
<向学のためにlimitationのまとめ>
・椎弓形成をランダム割付できなかった
- 椎弓形成をしているのは5/15施設しかなく米国では一般的ではないので
- なので、事後解析のため後方群を多めにした
・Nが少ないのでサブグループ解析は微妙
・後方術式選択にバイアスが入っているかも
- 除圧のみと除圧固定の適応は今後の課題
【コメント】
というか、メジャー施設15のうちLaminoplastyしてるの1/3しかないとかアメリカどうなってんだ!?頚髄症で固定要る人そんなに多いとはとても思えない…どうやら北米は頚髄症後進国なので、カッチリした頚椎の研究は日本発で発信する余地が大分ありそう。だから頚椎後方はアジア発の論文が多いのか…日本での臨床経験しかない田舎者なので、なかなかピンときませんが。これは探せばネタはいくらでもありますね…時間がないけど涙
Effect of Ventral vs Dorsal Spinal Surgery on Patient-Reported Physical Functioning in Patients With Cervical Spondylotic Myelopathy: A Randomized Clinical Trial
研究疑問 :頚髄症(CSM)では前方>後方か?
研究デザイン :RCT
セッティング :北米15施設
*2014.4.1~2018.3.30
P 多椎間CSM(45~80歳)
I 前方除圧固定 63人
C 後方除圧もしくは除圧固定 100人
O 主要:SF-36(PCS, 1Y)
副次:JOA, 合併症, 就業, SVA, Health resourceの使用?, NDI, EQ-5Dなど
CSMの手術は年々増えていて(2009年にnational health優先課題100に選抜)、米国では術後の頚部痛の少なさから前方除圧固定が良いとされる。でも結局前後どちらがよいかはっきりわかっていないので、調べてみました!という研究。
【方法】
・プロトコルと解析計画書を付録で添付
・CMSの定義は以下
①症状所見で以下2つ以上
- 手の痺れ、歩行障害、深部腱反射亢進、バビンスキー陽性、膀胱障害、クローヌス
②2椎間以上の病変
・除外基準は以下
- C2-7の後弯が5°以上
- 前方骨棘が3椎間以上
- 大きな骨棘やOPLL
- 過去の頚椎手術既往
- ASA4以上
・15人の専門家パネルが臨床的にequipoiseか(RCTして問題ないか)判定
- 12人以上の合意
・5or10の置換ブロックで2:3に割付
・後方除圧の場合固定追加するかは術者の判断
・ランダム割付拒否/ランダム割付が不適格な患者もコホートとして追跡
・PCSは偏差値に変換
- MCIDは5を採用
- α0.05、パワー90%、脱落15%で必要サンプルサイズは159人
・中間解析は行わず、モニタリング委員が合併症を観察
・主解析(PCS)は線形混合モデル
- 術者を変量効果、ベースラインPCS、介入、時点、介入×時点で構成
・他の解析も同様のモデル
- 2値アウトカムはカイ二乗検定
【結果と結論】
・潜在適格者458人中269人が参加、163人がランダム割付
・1年追跡は前方60/63人、後方95/100人で合計95%
- 2年追跡は80%
・1年時のPCS改善は
前方5.9 vs 後方6.2 で差0.3 (-2.6, 3.1)
・副次アウトカムの殆ど差なし、差があったのは以下(前方 vs 後方)
- 合併症割合 48% vs 24%で差24% (8.7, 38.5)
- 嚥下障害 41% vs 0%
- 神経症状悪化 2% vs 9%
- 再手術 6% vs 4%
- 1ヶ月再入院 0% vs 7%
このように、別に前方が優れているという結果がでなかったとの結論。
<向学のためにlimitationのまとめ>
・椎弓形成をランダム割付できなかった
- 椎弓形成をしているのは5/15施設しかなく米国では一般的ではないので
- なので、事後解析のため後方群を多めにした
・Nが少ないのでサブグループ解析は微妙
・後方術式選択にバイアスが入っているかも
- 除圧のみと除圧固定の適応は今後の課題
【批判的吟味】★★★★★
めちゃくちゃ頑張らないシンプルなデザインでも、ネタが重要で丁寧にやればJAMAに載るという夢のある論文。まぁ「優先課題100」だったり、JAMAのお国元である北米の研究ってのも大きいでしょうけど。前方か後方かサイコロ振って決めさせろ!というのもよほど有名な病院じゃないと患者逃げちゃいますから、民間病院ではできないですが涙。RoB2は
めちゃくちゃ頑張らないシンプルなデザインでも、ネタが重要で丁寧にやればJAMAに載るという夢のある論文。まぁ「優先課題100」だったり、JAMAのお国元である北米の研究ってのも大きいでしょうけど。前方か後方かサイコロ振って決めさせろ!というのもよほど有名な病院じゃないと患者逃げちゃいますから、民間病院ではできないですが涙。RoB2は
1. 割付けの隠蔽化 Low risk
2. 割付けの盲検化 Low risk
3. アウトカムの追跡 Low risk
4. 評価者の盲検化 Some concerns
5. 選択的な報告 Low risk
とRCTの質としてはかなり高いかなと(じゃないと今の時代JAMAには載りません)。欠測は約5%と少ないし、術式のクロスオーバーもかなり少ない。自己申告だし、PCSだとちょっと緩い気はしますが他にないんだから仕方ない。Flow chartの始まりが包含基準満たした対象じゃなく、その前の「Patients screened」になっているのもTop journalならでは。スタートの458人から、参加拒否とかランダム割付拒否で落ちたのが26人しかいないって俄かには信じがたいですが…そんだけ強い施設の研究なんでしょう。羨ましい限り…
4. 評価者の盲検化 Some concerns
5. 選択的な報告 Low risk
とRCTの質としてはかなり高いかなと(じゃないと今の時代JAMAには載りません)。欠測は約5%と少ないし、術式のクロスオーバーもかなり少ない。自己申告だし、PCSだとちょっと緩い気はしますが他にないんだから仕方ない。Flow chartの始まりが包含基準満たした対象じゃなく、その前の「Patients screened」になっているのもTop journalならでは。スタートの458人から、参加拒否とかランダム割付拒否で落ちたのが26人しかいないって俄かには信じがたいですが…そんだけ強い施設の研究なんでしょう。羨ましい限り…
【コメント】
というか、メジャー施設15のうちLaminoplastyしてるの1/3しかないとかアメリカどうなってんだ!?頚髄症で固定要る人そんなに多いとはとても思えない…どうやら北米は頚髄症後進国なので、カッチリした頚椎の研究は日本発で発信する余地が大分ありそう。だから頚椎後方はアジア発の論文が多いのか…日本での臨床経験しかない田舎者なので、なかなかピンときませんが。これは探せばネタはいくらでもありますね…時間がないけど涙