二択で迷ったらアグレッシブな方を選べ

本ブログのコンセプトは 「外科系臨床医に臨床研究について知ってもらう」です。自分で勉強したことを備忘録として気ままに書いていますので、情報の真偽については責任を負いかねます。また専門性が高い方にとっては内容が浅い点、分量が多くて読み辛い点もご了承くださいませ。

カテゴリ:臨床研究 > 分割時系列(ITS)

edXITS通信講座のWeek2がようやく終わりました。予想より大変...ただおかげで単純なITSとその図示がR Studioでできるようになりました!課題だった自己相関や移動平均の調整も含め、最低限の理論と技術は身にきました。edXすげぇ…

ITS図week2

さて、次はWeek3ではこれを読めと指示された論文を読みます。2013年PLOS ONEの論文。雑誌のインパクトはそう高くないですが、被引用は現時点で43となかなかのもの。

Impact of over-the-counter restrictions on antibiotic consumption in Brazil and Mexico.

Introduction
・南米では抗生剤の濫用が問題となっており、OTC処方を禁止する流れがある
・とくにメキシコとブラジルが問題、2010年に禁止する政策ができた
・横断研究では効果がありそうなので、追跡して両国での効果を比較する

Methods
・2007年~2012年2四半期までの出荷と販売のdata(kg/1000人日)
・総量と、種類で層化したサブ解析
・冬季を考慮(ブラジルでは2・3四半期、メキシコでは4・1四半期)
・ブラジルので介入は2011.1四半期、メキシコは2010.4四半期
 - なのでブラジルは2010.4四半期、メキシコは2010.3四半期を解析から除外
・降圧剤(介入の影響も季節性もなく、市場の拡大のみを反映)を対照群に
・季節性は介入前後別にダミー変数としてモデルに組み込み
・自己相関はPrais-Winsten回帰で調整、Durbin Watson 検定では自己相関なしの判定
・解析ソフトはSTATA(でできるんだ)

Results
・期間中に総使用量は
 - ブラジル 5.7→8.5 kg/1000人日に増加 (+49.3%)
 - メキシコ 10.5→7.5 kg/1000人日に減少 (-29.2%)
・介入によるレベル変化は(降圧剤のそれで調整)
 - ブラジル -1.35 kg/1000人日 (p<0.01)
 - メキシコ -1.17 kg/1000人日 (p<0.00)

Discussion
*limitationやStrengthがないので割愛

Conclusions
OTC抗生剤の規制はブラジルでは増加傾向を緩和し、メキシコでは減少傾向を促進し同様の効果がみられた。禁止政策は、使用量の減少に加え適正使用促進の尺度とともに今後も追跡が必要である。

【コメント】
示された数値が点推定値とp値だけだったり、論文としては全体的に荒い印象。方法も浅くてあまり勉強にはなりませんでしたが(p値どう計算したんだろう。トレンドの比較は??)、比較対象をもってITSしたハシリの論文ということでしょう。まーPLoS MedicineじゃなくPLoS Oneなのは納得。

edXITS通信講座のWeek1がようやく終わりました。Week2でようやくR Studioを用いた解析の実践です。以前ワークショップのお手伝いで少し触ったことはある程度なので、チュートリアルから受講。何となくわかった気になりました。普段はSTATAですが、R Studioは何と言っても無料だし、選択肢も多そうなので使えて損はないでしょう。何かカッコいいグラフがすぐ書けちゃいました。

RStudio画面

さて、最初にWeek2ではこれを読めと指示された論文を読みます。2011年BMJの論文。観察研究の最高峰といえばBMJですので、ITSはちゃんとやれば強力な研究手法ということですね。

Effect of pay for performance on the management and outcomes of hypertension in the United Kingdom: interrupted time series study

INTRODUCTION
・pay for performance(PFP)が普及しつつあるが、効果は不明
・高血圧症はPFPの効果をみるのに適当な慢性疾患
・英連合4ヶ国で調べてみました
 - PFP導入は2004.4月

METHODS
・The Health Improvement Network(THIN)を用いてITS(不連続回帰)
 - 英358開業医620万/人年、計47万人のdataを包含
 - 社会経済因子、検査値、診断、受診毎の処方内容などを格納
 - さらに追加医療、生活習慣もわかる
 - 人口レベルdataでクラスターバイアスが入らず
・導入前3年と後4年を解析(2000.1月~2007.7月)
・2004.6月にガイドライン刊行あり、2004.4月~6月を介入期間に設定
・アウトカムは目標(150/90mmHg)達成、血圧モニタリング、処方数、有害事象
 - その月の登録者数で除して率に変換
・自己相関を考慮、backward eliminationで修正
・有害事象についてはextended piecewise コックスモデルを使用
 - 年齢、性、喫煙習慣、糖尿病、うつ、BMIで調整
 - 2003.10月の12M前から治療開始したコホートを2007.7月まで追跡
 - 対象は欠測なし(78%)

RESULTS
・目標達成割合はレベル −1.19 (−2.06,  1.09)、トレンド −0.01 (−0.06, 0.03)
・血圧モニタリング割合はレベル +0.85 (−3.04, 4.74)、トレンド  −0.01 (−0.24, 0.21)
・処方数のレベル・トレンドともに変化はみられず
 - 新規処方開始割合はレベル +0.67 (−1.27, 2.81)、トレンド +0.02 (−0.23, 0.19)
・有害事象についてもレベル・トレンドともに変化はみられず

DISCUSSION(Strengths and limitations以外は割愛)
・PFPは英連合4ヶ国すべてで開始したので適切な比較対照がみつけれず
 - でも厳格で大きなデータセットを厳格に解析した
 - 複数アウトカムの結果も一貫している
・英と保険制度が違う国への外的妥当性は低い
 - でも保険制度が違っても、医師の性質はそうかわらない

【コメント】
比較対照はないものの、しっかりしたデータベースにちゃんとITSすればBMJに載るという実践的なITSのお手本という位置づけなのでしょう。開いたコホートを対象にして介入前後の特性の変化についての疑義を減じる、複数アウトカムで頑健性を示す、人口レベルの解析で個人レベルの交絡を減じているということでしょうか。自身の研究に役立てれそう。自己相関の考慮については詳述されていなかったのが残念ですが、講義が進めばわかってくる(はず)。

edXITS通信講座において3つ目はこの論文だ!と指示された論文を読みます。2014年Implementation science(2018年IF4.5)の論文。全然知らんけどHigh IF…どうも既存研究のdataでITS使って再解析したら全然結果違うし!という興味深い論文の模様。

The use of segmented regression in analysing interrupted time series studies: an example in pre-hospital ambulance care.

Background
*とくに新たな知見はなく割愛

Illustration
・題材にする既存研究の概略
 研究疑問 :共同介入は病着前治療の質を改善するか?
 セッティング :英11救急組織(2010.1月~2012.2月)
  P 病着前にAMI/Stroke診断がついた患者
  I 時点が新しい
  C 時点が旧い
  O 定義された治療の受療
 *組織ごとにロジスティック回帰しメタアナリシス
  - 説明変数は時間、年齢、性
 *結果はAMIでOR 1.04 (1.04, 1.04)、StrokeでOR 1.06 (1.05, 1.07)
  - 結論は共同介入は効果あり! 

・しかし付録dataを使ってITSしてみると…
 AMIの介入前トレンドはOR 1.02で介入の追加効果はOR 1.04 (0.98, 1.10)
  - すなわち有意な結果ではない
  - 86W全体ではOR 3.02(介入なしでOR 1.45の予測)で意義はありそう
 Strokeの介入前トレンドはOR 1.05で介入の追加効果はOR 1.02 (0.97, 1.07)
  - こちらも有意な結果ではない
  - 86W全体ではOR 4(介入なしでOR 2.9の予測)で効果も微妙か

Discussion
・複数の介入があるとITSは難しい
 - 介入時点を複数とる解析もできるが、介入間に十分な期間が必要
・介入の効果の遅延も問題となる
 - 介入前、介入、介入後の3期間に分ける方法もある
 - 介入期間を除外することもできる
・セッティングが複数あるとややこしい
 - 全体のITSは変量効果ロジスティックモデルより検出力が低い
 - 各施設のITSをメタアナリシスする方法もある
 - 全体でITSしたあとに各施設の多様性を検討する方法もある
・外れ値の影響には感度解析を使う
 - 解析から除外したり、別変数として示す
 - moving averagesを使うこともできる
 - 時点を統合して影響を減らす方法もある(毎週→2週など)

Conclusion
ITSには不連続回帰を用いるべきだろう
 - 時間を連続変数とした単純な回帰直線は全体の傾向しか示さない
 - すなわち、介入の効果を切り出すことができない

【コメント】
単純な線形回帰では全体のトレンドと介入の効果を切り分けることができない!ということを示した論文。方法論は総論的で、細読する意義はなかったかも…多くの単純な前後比較や、時系列dataを線形回帰した研究を再解析したらいったいどうなるんだろう、と恐ろしくなる内容ではありました。今後査読で何も考えていない前後比較きたらrejectしなきゃいかんのか?

先刻読んだITS教育論文でもITSの評価基準が提唱されていました…先日紹介した基準とはまた別の模様。読むしかないですね…こちらもパッと見EQUATORにはなさそう。約40項目もあるので使い辛そうだなぁ。

Title and abstract
1. ITSとの明示
Introduction
2. 介入とセッティングついての情報(研究とその方法の根拠)
3. (a) 目的と仮説明示
(b) 目的主/副次区別
Methods 4. 介入の時点の明示
5. (a) 対象の 包含基準と選択方法
(b) 対象のサブグループの定義
(c) 比較対照群を別集団に設けているか
6. (a) データソースの記述
(b) データの欠測、妥当性、データ収集の経時的変化の言及
7. (a) アウトカム変数、記述/層化変数の定義
(b) 変数測定の経時変化についての言及
(c) 変数測定の詳細についての付録
8. (a) 時間間隔(月や1/4年など)、回帰モデル、時点の明示
 *ARIMAモデルならintervention functionの記述も(point, ramp, or step)
 *線形モデルなら、その使用の妥当性の記述も
(b) 研究期間と予測に用いた介入前の時点数
(c) 自己相関、非定常性、季節性にどう対処したか
(d) 介入効果の遅れについての考慮
(e) 主解析、副次解析、感度解析の区別
(f)  副次解析として、別のアウトカムや対照群との比較の考慮
(g) 解析ソフトの情報
 Results
9. (a) 解析した各群の人数/観察数
(b) フローチャートの使用
(c) 集団の特性と欠測の記述
10. (a) 研究期間を通じたアウトカムの報告
(b) アウトカムの平均、最小および最大値の報告
(c) データの変動?の報告
11. (a) 介入時点を明示したグラフの使用
(b) グラフに予測線も入れる
(c) 変化量と有意性についての報告
12. 副次結果や感度解析結果の報告(付録でも可)
 Discussion
13. 研究目的と結果のサマリー
14. (a) 共介入、集団特性/アウトカム測定の経時変化の言及
(b) 対照群との比較、ない場合はその根拠の報告
15. (a) limitation
(b) データの変動?と測定時点の妥当性について
(c) 外れ値、天井/床うち効果があればその言及
(d) バイアスの方向と大きさ
16. 全体としての結果の解釈
 Other information
17. ファンドのリストとその役割
18. 使用した統計解析についての文献引用

edXITS通信講座において「これまでの流れがわかるから、次はこの論文読め!」と指示された論文を読んでみます。2015年Journal of clinical Epidemiology(2018年IF4.7)、敷居も高くおぉ!という雑誌。これも普通に脊椎外科医してたら絶対読まないなぁ。

Interrupted time series analysis in drug utilization research is increasing: systematic review and recommendations.

1. Introduction
・ITSを用いた医学研究は1981年の地域周産期ケアの研究
・ITSを用いる際はまず自己相関、非定常性、季節性の考慮が必要
 - 自己相関はアウトカム測定誤差項の連続した依存?を指す
   例えば処方パターンは時点が近いほど似る
   Ljunge-Box χ二乗統計量やDurbine-Watson統計量で表す
 - 非定常性は介入と関係ない傾向を指す
   例えば新規発売された薬は徐々に普及する
 - 季節性は周期的なアウトカム変動を指す
   例えばインフルエンザ処方
・測定時点と時点毎の観測数も重要(多いほどよい)
 - 介入前後それぞれ9時点、できれば介入期間にも9時点ほしい
 - 1時点あたり100観測数ほしい
・アウトカム測定における天井/床うち効果も考慮すべき
 - 例えば割合の上限は100%であり、天井うちしやすい
・介入が緩徐に導入される場合はラグ期間に注意
 - 対処は除外、別期間として解析やARIMAモデルでのramp function使用
 - 解析して数字で出さなくても、グラフが視認性がよく有効かも
・最も注意すべきは時間依存性交絡
 - アウトカム測定の変化、共介入や集団特性の変化
 - 同一集団で別のアウトカムをみたり、対照集団を設定するとよいかも
・研究目的は薬剤関連研究でのITSの使用状況の調査

2. Methods
・MEDLINE、Web of Science、Reference listを検索
・1984~2013.12月まで
*主旨から外れるので詳細は割愛

3. Results
・220研究を発見
・2000年までの研究は17本 (8%) しかなく、2010年以降が90本 (41%) もあった
・方法の詳細がある200本の解析法は
 - 67%が不連続回帰、16%がARIMAモデル、11%が線形回帰
・研究目的の内訳は
 - 政策 (51%) 、新規エビデンス (22%)、安全性 (18%)、質改善介入 (16%)
・自己回帰は66%、季節性は31%、非定常性は15%で考慮されていた

4. Discussion
・ARIMAモデルは自己回帰、季節性や非定常性が考慮されている
・不連続回帰では上記を別に考慮すべき(だが報告していない研究が結構あった)
・介入の明示とグラフ化は多くの研究で達成されていた
・そこでITSを使用する際のチェックリストを作った(これは別記事として出します)
*方法論のStrength/Limitationも割愛

Summary
・近年とくに薬剤関連研究でのITS使用が増えている
・適切に使えばITSは強力だが、報告の方法は多様なので注意
・薬剤関連研究でのITSの標準化が必要なので、チェックリスト使ってください

【コメント】
ITSの総論的な論文。とくに背景が知識の整理に役立ちました!さすがJCE。というかここにもcheck listが…先日BMJ論文で使ってたcheck list読んだばかりなのに…とりあえず訳しておきます。

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