現在腰部脊柱管狭窄症(LSS)の予後についての論文をついにSpineに投稿中なのですが、LSSの論文がSpineに出たので偵察がてら読んでみます。お手並みはいかに…

Long-term Results After Surgical or Nonsurgical Treatment in Patients With Degenerative Lumbar Spinal Stenosis: A Prospective Multicenter Study

研究疑問  :LSSには手術した方がいいか?
研究デザイン:前向きコホート
セッティング:スイスの8病院レジストリ(841例登録)

P LSS患者 679人
E1 手術(除圧 or 固定)
E2 1年保存でみて手術 
C 保存
O 症状スコア、QOL(後3年まで追跡)

LSSに手術することが多いけど、実際にした方がいいかは実はわかっていない。Cochrane reviewでも結果はuncertainだったので、今回レジストリからの成績を報告します、という研究。

【方法】
・手術するかどうかは担当医の判断と患者の希望
・画像がない例、手術既往例などを除外
・症状スコアはSpinal Stenosis Measure(SSM)
 - 症状5点、機能4点、満足度4点
 - MCIDは症状0.48、機能0.52
・QOLはEQ-5D-3L(VASも入っている)
 - フランス人の標準値は0.53~1
 - 0が死んだも同然、1が完全に健康
 - MCIDは0.19
・解析は検定のみ
 - 除圧と固定の比較に多重線形回帰

【結果と結論】 
・脱落は1Yで11%、2Yで16%、3Yで22%
・E1群はすべてのアウトカムで優れていた
 - P<0.001、実数提示なし(図のみ)
 - P値はE1E2Cの3群比較?
・MCID達成は(いつの時点?検定の結果は?)
 - SSM機能 :E1 67% vs E2 35% vs C 37% 
 - SSM症状 :E1 73% vs E2 53% vs C 52% 
 - QOL :E1 61% vs E2 29% vs C 31% 

というわけで、保存群に比べ手術群はより改善が期待でき、維持できるとの結論。

【批判的吟味】★★
症状改善について手術の優位性を肯定しなかったCochraneの結論には、全く賛同できません。もし手術する意味ないなら、手術を生業にしている我々は不要になっちゃいますから。なのでやりたいことはよくわかります。しかし、uncertainのエビデンスがはっきりでている現状で、質が低いデザインで手術の効果を主張しても逆効果というか…折角前向きに調査するのに勿体ないというか…患者に失礼というか…観察研究なら比較の妥当性の担保がどこまでできるか?が命綱ですが、残念ながら弱すぎます。ざっくり気になる点を述べますと

・何をどう比較したいかが不明瞭
 - 研究疑問と関係ない結果が多すぎて冗長
 - 重要な結果の提示が不足
 - 方法と結果が1:1対応になっていない
・1年保存で手術した人を別群にするのは✕(保存群に入れるべき)
・欠測が相当重要だが、考慮されていない
・そもそも検定での比較は無理
 - 最大の弱点である適応交絡が全く考慮されていない

など、そもそも的なところで勝負にならず…

【コメント】
大変恐縮ですが、このレベルで掲載されるってことは、査読が間に合っていない様子。そりゃ10本/日も投稿あればそうなりますよね…私の研究たちも載せてくれないかなぁ…贔屓目差し引いても質は足りてると思うのですが涙…