医療従事者の健康問題を扱った論文を探しているんですが、思ったほどエビデンスがないのがちょっと驚きです。今日はカテ室勤務者の被曝と健康問題についての論文を。Circulation-Cardiovascular interventions(2019IF5.5)掲載の2016年の論文。というか、循環器系ってIF5.5でもTop20に入らないのか…整形系だと同ランクでIF2.7くらいで、5.5だとAMERICAN JOURNAL OF SPORTS MEDICINEに次いで2位になります。
研究疑問 :①カテ室勤務者の健康問題の記述
②放射線被曝と健康問題の関連性の探索
研究デザイン :過去起点コホート(というより横断研究か)
セッティング :伊
P 心カテ学会参加者(2011, 2012)、循環電気生理学会参加者(2014)
+CNR Research Camous勤務者
E 被曝機会あり 466人
C 被曝機会なし 280人
O 整形疾患、皮膚疾患、白内障、糖尿病、甲状腺疾患、
不安、高血圧、高コレステロール値症、脳卒中、心疾患、癌
カテーテル手技の従事者には重い防護具の使用、緊張、放射線被曝などによる健康問題が懸念されるが、どの程度発生しているのかはわかっていない、ので調べてみました!という研究。
【方法】
・対象者(全体で3200人)に任意で質問票への回答を依頼
- 背景情報、勤務歴、生活歴、治療歴、健康状態などを調査
- 953人(30%)から回答あり、うち207人は不十分で除外
- 最終的な調査対象は746人(23%)
・被曝機会の程度は自作のORRSで数値化
- 勤務年数×症例数(1-3の3カテゴリ)(×筆頭術者以外は0.5)
・解析は主に単変量解析
- 年齢、性、喫煙習慣で調整したオッズ比も提示
【結果と結論】
・被曝群は医師47%、看護師41%、技師12%
- 勤務期間は中央値10年
・被曝群で多そうだった主な項目は
- 皮膚疾患 9% vs 2% aOR 2.8 (1.3, 6.1)
- 整形疾患 30% vs 5% aOR 7.1 (4.0, 12.4)
- 白内障 5% vs 1% aOR 6.3 (1.5, 27.6)
- 高血圧症 13% vs 8% aOR 1.5 (0.9, 2.6)
- 高コ血症 12% vs 4% aOR 3.1 (1.5, 6.2)
- 癌 3% vs 1% aOR 3.0 (0.6, 13.7)
・健康問題の有病割合は、年齢と用量反応関係がありそう
・健康問題の有病割合はORRS≥13に多そう
で、だいたい被曝群のほうが健康問題が多かったので、カテ室の勤務安全性を高める必要があるでしょうとの結論。
【向学のためにlimitationのまとめ】
・回答割合30%は低いけど、こんなもの ←30%じゃなくて23%!
【コメント】
2015年から現在までの5年間でこの分野のエビデンスはどれだけ蓄積されたのでしょうか?恐らくアカデミック力が高い循環器内科でこれなので、整形外科ではまだまだエビデンスは足りないに違いない!と信じて研究を進めようと思います。整形外科の先生方すいません…というか、なんか壮大な話になってきたな…そこまでの覚悟はなかったのですが…
研究疑問 :①カテ室勤務者の健康問題の記述
②放射線被曝と健康問題の関連性の探索
研究デザイン :過去起点コホート(というより横断研究か)
セッティング :伊
P 心カテ学会参加者(2011, 2012)、循環電気生理学会参加者(2014)
+CNR Research Camous勤務者
E 被曝機会あり 466人
C 被曝機会なし 280人
O 整形疾患、皮膚疾患、白内障、糖尿病、甲状腺疾患、
不安、高血圧、高コレステロール値症、脳卒中、心疾患、癌
カテーテル手技の従事者には重い防護具の使用、緊張、放射線被曝などによる健康問題が懸念されるが、どの程度発生しているのかはわかっていない、ので調べてみました!という研究。
【方法】
・対象者(全体で3200人)に任意で質問票への回答を依頼
- 背景情報、勤務歴、生活歴、治療歴、健康状態などを調査
- 953人(30%)から回答あり、うち207人は不十分で除外
- 最終的な調査対象は746人(23%)
・被曝機会の程度は自作のORRSで数値化
- 勤務年数×症例数(1-3の3カテゴリ)(×筆頭術者以外は0.5)
・解析は主に単変量解析
- 年齢、性、喫煙習慣で調整したオッズ比も提示
【結果と結論】
・被曝群は医師47%、看護師41%、技師12%
- 勤務期間は中央値10年
・被曝群で多そうだった主な項目は
- 皮膚疾患 9% vs 2% aOR 2.8 (1.3, 6.1)
- 整形疾患 30% vs 5% aOR 7.1 (4.0, 12.4)
- 白内障 5% vs 1% aOR 6.3 (1.5, 27.6)
- 高血圧症 13% vs 8% aOR 1.5 (0.9, 2.6)
- 高コ血症 12% vs 4% aOR 3.1 (1.5, 6.2)
- 癌 3% vs 1% aOR 3.0 (0.6, 13.7)
・健康問題の有病割合は、年齢と用量反応関係がありそう
・健康問題の有病割合はORRS≥13に多そう
で、だいたい被曝群のほうが健康問題が多かったので、カテ室の勤務安全性を高める必要があるでしょうとの結論。
【向学のためにlimitationのまとめ】
・回答割合30%は低いけど、こんなもの ←30%じゃなくて23%!
・直接線量を調べてないけど、線量計普及してないんだから仕方ない
・背景情報が偏っていたけど、貴重な情報でしょ?
・この研究は「One Million Workers Study」の先取り報告です。
- 結果でるまえに、もっと被曝防護意識たかめましょう
・背景情報が偏っていたけど、貴重な情報でしょ?
・この研究は「One Million Workers Study」の先取り報告です。
- 結果でるまえに、もっと被曝防護意識たかめましょう
【批判的吟味】★★★
興味深いアウトカムを複数調査しており、おもしろい研究でした。各アウトカムと放射線の関連性を示唆するメカニズム研究などをたくさん引用していて、非常に参考になります。「One Million Workers Study」どうなってるんだろ、次はここ調べて読んでみなきゃ。ただ、方法論的には回答割合23%
で、これだけ背景偏った集団で、ほぼ単変量解析に近い解析しても、バイアスが大きすぎて強いことはまず言えません。Limitationには述べてますが、全然defenseできてないし、これでIF5.5の雑誌に載るのは内容は切実だから?本研究結果はあくまで探索的な、仮説生成的な位置付けなので、各アウトカムについて質の高い追証が必要です。
興味深いアウトカムを複数調査しており、おもしろい研究でした。各アウトカムと放射線の関連性を示唆するメカニズム研究などをたくさん引用していて、非常に参考になります。「One Million Workers Study」どうなってるんだろ、次はここ調べて読んでみなきゃ。ただ、方法論的には回答割合23%
で、これだけ背景偏った集団で、ほぼ単変量解析に近い解析しても、バイアスが大きすぎて強いことはまず言えません。Limitationには述べてますが、全然defenseできてないし、これでIF5.5の雑誌に載るのは内容は切実だから?本研究結果はあくまで探索的な、仮説生成的な位置付けなので、各アウトカムについて質の高い追証が必要です。
【コメント】
2015年から現在までの5年間でこの分野のエビデンスはどれだけ蓄積されたのでしょうか?恐らくアカデミック力が高い循環器内科でこれなので、整形外科ではまだまだエビデンスは足りないに違いない!と信じて研究を進めようと思います。整形外科の先生方すいません…というか、なんか壮大な話になってきたな…そこまでの覚悟はなかったのですが…