勤務先がコロナ対応で入院受け入れできず、手術が少ないです。その間にたまりまくった研究関連の仕事をしたいところですが、さきソッチやると論文読めないので無理やり1つ読みます。今回は年末にBone & Joint J(2021IF5.4)にスウェーデンの整形外科からでた「腰部脊柱管狭窄症(LSS)に対する除圧 vs 除圧固定」のRCTを。古から結論が出ていないテーマですが、どういう結果だったんでしょう?
Decompression alone or decompression with fusion for lumbar spinal stenosis: a randomized clinical trial with two-year MRI follow-up
研究疑問 :LSSに対する固定併用 vs 除圧単独
研究デザイン:RCT(のサブグループ解析)
セッティング:スウェーデン6病院(公5私1)
*2006~2012年
P 隣接1~2椎間まで狭窄があるLSS 222人
I 除圧₊固定 110人
C 除圧のみ 112人
O 主要:LSS再発(手術高位 or 隣接)
副次:すべり進行(除圧群のみ:手術高位)
椎間板変性(隣接)、各PRO
*術後2年時のMRIとX線(仰臥位側面)を使用
*PROはSwespineのデータを利用
LSSに手術する場合、除圧だけでいくのか、固定を併用するかは悩ましい。我々の初報(NEJMの有名な論文)では、臨床成績はすべりがあろうがなかろうが固定併用と除圧単独に差はなく、侵襲とコストを考えたら固定併用<除圧単独との結果だった。今回は再狭窄と隣接椎間障害に注目して、術後2年でMRIを予定していたサブグループを解析してみました!という研究。
【方法の主なところ】
・初報RCTのプロトコルはSwespineで一般公開
・置換ブロック法で1:1に割付
- すべり≥3mmで層化
・対象は2椎間までのLSS(VAS>30、罹患≥6ヶ月)
- LSSの定義はMRIで硬膜管の断面積≤75mm2
- 分離、変性側弯、手術歴、骨折併存などを除外
・固定法はPLF、PLIF、インスツルメントなしPLF
・画像アウトカムは脊椎外科医2名が測定
【結果と結論】
・対象222人を固定110人と除圧112人に割付
- 固定90人(82%)除圧86人(77%)がMRI
- 再手術脱落が固定2人(1.8%)除圧8人(7.1%)
・LSS再発(手術高位 or 隣接)は
全体 固定 47% vs 除圧 29% (p=0.002)
すべりあり 固定 48% vs 除圧 24% (p=0.002)
すべりなし 固定 45% vs 除圧 35% (p=0.488)
・隣接LSS再発に限定すると
固定 44% vs 除圧 17% (p<0.001)
・手術高位LSS再発に限定すると
固定 4% vs 除圧 14% (p=0.036)
・除圧群のすべりの進行は
すべりあり 7.2mm [3.2] →8.3mm [3.5]
すべりなし 0.9mm [1.7] →2.0mm [2.6]
で、すべりがあろうがなかろうが固定併用は除圧単独よりLSS再発が多かった。のでやはりLSS手術では固定併用より除圧単独を支持するとの結論。
【コメント】
個人的には固定した方がいい例って絶対あると思うのですが…臨床感覚とエビデンスにギャップがある気がします(脊椎外科あるある)。エビデンス的には初報がNEJMでサブ解析がBJJなので無双状態です。でも、不安定性を評価せずに仰臥位X線ですべりを定義していたり、インスツルメントなしPLFを介入に含んでいたり、臨床的にズレた感じは否めません。論文内で手術適応についても書かれておらず、現状では納得も反論もできないので初報を読まないとダメですね汗。にしても政府バックでPROとってるのはすごいなぁ…
Decompression alone or decompression with fusion for lumbar spinal stenosis: a randomized clinical trial with two-year MRI follow-up
研究疑問 :LSSに対する固定併用 vs 除圧単独
研究デザイン:RCT(のサブグループ解析)
セッティング:スウェーデン6病院(公5私1)
*2006~2012年
P 隣接1~2椎間まで狭窄があるLSS 222人
I 除圧₊固定 110人
C 除圧のみ 112人
O 主要:LSS再発(手術高位 or 隣接)
副次:すべり進行(除圧群のみ:手術高位)
椎間板変性(隣接)、各PRO
*術後2年時のMRIとX線(仰臥位側面)を使用
*PROはSwespineのデータを利用
LSSに手術する場合、除圧だけでいくのか、固定を併用するかは悩ましい。我々の初報(NEJMの有名な論文)では、臨床成績はすべりがあろうがなかろうが固定併用と除圧単独に差はなく、侵襲とコストを考えたら固定併用<除圧単独との結果だった。今回は再狭窄と隣接椎間障害に注目して、術後2年でMRIを予定していたサブグループを解析してみました!という研究。
【方法の主なところ】
・初報RCTのプロトコルはSwespineで一般公開
・置換ブロック法で1:1に割付
- すべり≥3mmで層化
・対象は2椎間までのLSS(VAS>30、罹患≥6ヶ月)
- LSSの定義はMRIで硬膜管の断面積≤75mm2
- 分離、変性側弯、手術歴、骨折併存などを除外
・固定法はPLF、PLIF、インスツルメントなしPLF
・画像アウトカムは脊椎外科医2名が測定
【結果と結論】
・対象222人を固定110人と除圧112人に割付
- 固定90人(82%)除圧86人(77%)がMRI
- 再手術脱落が固定2人(1.8%)除圧8人(7.1%)
・LSS再発(手術高位 or 隣接)は
全体 固定 47% vs 除圧 29% (p=0.002)
すべりあり 固定 48% vs 除圧 24% (p=0.002)
すべりなし 固定 45% vs 除圧 35% (p=0.488)
・隣接LSS再発に限定すると
固定 44% vs 除圧 17% (p<0.001)
・手術高位LSS再発に限定すると
固定 4% vs 除圧 14% (p=0.036)
・除圧群のすべりの進行は
すべりあり 7.2mm [3.2] →8.3mm [3.5]
すべりなし 0.9mm [1.7] →2.0mm [2.6]
で、すべりがあろうがなかろうが固定併用は除圧単独よりLSS再発が多かった。のでやはりLSS手術では固定併用より除圧単独を支持するとの結論。
【批判的吟味】★★★★
このテーマでしっかりRCTすればBJJじゃなくてBMJだよな、と思ったらもうNEJMで発信した後のサブグループ解析でした(納得)。除圧での手術高位の再発と固定での隣接再発を複合アウトカムにしたのはなるほど!と思いました。RoB2は
このテーマでしっかりRCTすればBJJじゃなくてBMJだよな、と思ったらもうNEJMで発信した後のサブグループ解析でした(納得)。除圧での手術高位の再発と固定での隣接再発を複合アウトカムにしたのはなるほど!と思いました。RoB2は
1. 割付けの隠蔽化 Low risk
2. 割付けの盲検化 Low risk
3. アウトカムの追跡 High risk
4. 評価者の盲検化 High risk
5. 選択的な報告 Low risk
とRCTの質としてはそこそこです。アウトカム追跡が約8割でと微妙で除圧群にやや脱落(とくに再手術)が多く、「3. アウトカムの追跡」はHigh risk。再手術例を再発としたPost Hoc解析してもよかった気がします。それだけで再発は固定46% vs 除圧35%になり多分有意差つきません。評価者は割付を知っていて、おそらく「固定しなくてもいいやん」と思っている脊椎外科医なので「4. 評価者の盲検化」もHigh risk。放射線科医にできるだけ盲検化した状況で評価してもらうこともできたはずなので勿体ない。
4. 評価者の盲検化 High risk
5. 選択的な報告 Low risk
とRCTの質としてはそこそこです。アウトカム追跡が約8割でと微妙で除圧群にやや脱落(とくに再手術)が多く、「3. アウトカムの追跡」はHigh risk。再手術例を再発としたPost Hoc解析してもよかった気がします。それだけで再発は固定46% vs 除圧35%になり多分有意差つきません。評価者は割付を知っていて、おそらく「固定しなくてもいいやん」と思っている脊椎外科医なので「4. 評価者の盲検化」もHigh risk。放射線科医にできるだけ盲検化した状況で評価してもらうこともできたはずなので勿体ない。
【コメント】
個人的には固定した方がいい例って絶対あると思うのですが…臨床感覚とエビデンスにギャップがある気がします(脊椎外科あるある)。エビデンス的には初報がNEJMでサブ解析がBJJなので無双状態です。でも、不安定性を評価せずに仰臥位X線ですべりを定義していたり、インスツルメントなしPLFを介入に含んでいたり、臨床的にズレた感じは否めません。論文内で手術適応についても書かれておらず、現状では納得も反論もできないので初報を読まないとダメですね汗。にしても政府バックでPROとってるのはすごいなぁ…