二択で迷ったらアグレッシブな方を選べ

本ブログのコンセプトは 「外科系臨床医に臨床研究について知ってもらう」です。自分で勉強したことを備忘録として気ままに書いていますので、情報の真偽については責任を負いかねます。また専門性が高い方にとっては内容が浅い点、分量が多くて読み辛い点もご了承くださいませ。

カテゴリ:論文投稿のすすめ > 二重投稿

自分なりに頑張ってもなかなか成果がでなかったのですが、論文書き始めて2年半でようやく論文発表できるようになってきました。そうなると「多くの方に論文を読んでもらいたい」とか、「他人の意見を聞いて次の研究に活かしたい」という真面目な思いや、「学会発表しに行って(ついでに)美味しいもの食べたい」という現実的な思いが沸いてきます。というわけで、論文書いたらさて次の脊椎病学会はどこでやんのかな~となるのは普通じゃないでしょうか(むしろ真面目?)。実際もうすぐAcceptされそうな研究がありますので、さてどこで学会発表しよう?とメンター先生にご相談すると…

 「それ注意した方がいいですよ」

とのご指導あり、事例を教えていただきました。びっくりしたので調べてみますと、文科省のHPに公開されているじゃないですか…概要をまとめると

 A大教授、院生、B大講師が研究を国際学会で発表
 プロシーディングが学会誌に公開
 院生が日本語論文化し、日本の学会誌に投稿し掲載
 二重投稿に認定され、掲載取り消し
 不正事案として調査され、認定
 A大教授は懲戒(停職14日)、B大講師は訓戒

ちなみに、A大教授の「国際学会で発表したプロシーディング論文は、口頭発表の概要と同じ程度であり、人間工学会での論文が正規の論文と考えていたことから、同じ内容で投稿しても問題ないと理解していた」という回答に対し「研究倫理意識の低さからくる」と断罪されています…正直

 マジですか…

という言葉しか出ません。院生は学位論文だったのかな?可哀そうすぎる…共著者もヤラれてるやん…立場ある方にとばっちりいったらヤバいやん…

臨床疫学を学ぶ前は、学会発表は自分の研究に建設的な意見もらって推敲するための、論文発表に向けた修行の場かと思ってました。臨床疫学を学んでからは、前述のとおり、学会発表は論文発表(少なくとも投稿)した後に、研究を広く知ってもらうためのお披露目の場かと思っていました。なにしろ学会発表も「公開」なので、発表後に数字や解析が違ったら研究全体の信頼が損なわれてしまいますので…ところがどちらもグレーのようです(涙)。現時点で私の理解する正しいやり方は

 ①完全に仕上がった状況で学会発表
  →学会発表したことを申請して論文投稿
 
 ②論文発表
  →論文雑誌に学会発表の許可をとる
  →その旨学会に申請してから学会投稿
  *論文が掲載されるまで学会投稿はしない

の2つしかないように思います。①にしてもし採択に影響したら気持ち悪いですし(プレプリント受けないBJJとかは影響するかも…)、②は面倒臭すぎるし…ので、結論としては表題のように「論文化したいので学会発表はしません」になります。テキ〇ーな発表であれば支障ないですけど、そこに割く時間は捻出できそうもない。国内学会への発表であれば演題が公開されないものも多いので、今のところそこまで厳密に考えなくてよさそう。ただ、医中誌に会議録が載る学会への投稿は要注意でしょう。というわけで、今後学会発表は厳選していくしかないです。コロナが明けてもそう簡単には学会に行けないなぁ…発表ないのにあんまり病院空けれないし。学会で旧知の先生と意見交換したりするのは重要なことですし、研究する大きなモチベーションだったのですが…

ディ〇バン事件や、〇TAP細胞の影響か年々研究者の居心地が悪くなっていく気がします。立場が上になるほど相乗的に忙しくなる上に、見合った報酬が得られるわけでもありません。研究を取り巻く環境が「偉くなりたいという野心」や、「ちゃんと研究しないと!という善意」のみに依存している現状では、日本のアカデミック領域は先細りな気が…とりあえず、学会投稿後にacceptされた研究は学会に演題取り下げお願いし、投稿中の論文の学会発表は諦めました(泣)…

先日Springer Nature系の雑誌に論文投稿した際に、「Research Square」と原稿を共有するけどいいか?という旨のcheck項目がありました。OKしないと投稿できないのでするしかないんですけど、ちょっと引っ掛かったので調べてみました。これって「プレプリント」として投稿中の原稿を公開されてしまうのでは?

Research SquareのHPみてみると、やっぱりResearch Squareに原稿がいくと、「In Review」というサーバーでプレプリントとして公開されることがあるようです。一応審査があって、パスすればHTMLに変換されて、CC-BY4.0 ライセンスとDOIが付与されて公開されると。Participating Journals & Platformsをみてみると数百のジャーナル名が…お世話になりそうな雑誌としてはSci Repとかがあります。私が投稿した雑誌は、体験者した先生からいただいた情報では投稿後に「希望すればIn Reviewに載せることができるから、興味があったら教えてね」という旨のメールが来るようです。みてみるとParticipating~には載っていない。じゃあ載っている雑誌なら投稿=公開なのかな。一応「opt in」と書かれているので、勝手に公開されることはないと思いますが…

一応Sci Repでみてみますと
Sci Repプレプリント
こんな感じでやっぱりopt inになるみたいです(そりゃそうか)。はやる気持ちを抑えきれずにYes連打してしまうとプレプリントとして公開になってしまいますので、そのつもりがない人は要注意。ちなみにプレプリントの功罪について(勝手に)まとめますと、以下のような感じでしょうか。

【利点】
・いち早く研究成果を公開できる
 - プライオリティを確立できる
 - 他の研究者がいち早く参考にできる
・投稿原稿の時点で他者が引用可能になる
 - 研究成果として履歴書にも書ける
・プレプリントをそのまま投稿できる雑誌もある(投稿が楽)

【欠点】
・プレプリント公開論文を受け付けない雑誌がある
・洗練される前の原稿が世にでてしまう
 - 改定は容易だが、記録が残る
 - 一旦出ると完全には消せない
 - もし間違いがわかったら恥ずかしい
 - 共著者にもとばっちり
・アイデアパクられて先にいい雑誌に出されるかも?

というわけで、Reviewや著者校正で洗練しようという軽率な考えは捨てて、そのまま公開していいくらいしっかり作りこんで、共著者全員に確認してからオプトインしないと結構問題になりそうです。これは要注意ですね…心当たりがある人はResearch Squareで自分の名前検索してみてください。え?公開されてるやん!ってびっくりすることになるかも…私も恐る恐る検索しましたが、幸い名前なかったのでヨカッタ!?てかライセンスについてもよくわかっていないので勉強しないとだめだなぁ。5年勉強してもわからないことだらけ涙。てかBJJはプレプリント公開論文投稿不可と…怖っ…

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